千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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3.2 AlドープSiCの評価 図3は,Al注入SiCにおいてエネルギーを変化させてレーザーアニールを行った場合のラマンスペクトルである.ラマン散乱強度は,776 cm-1の値で規格化している. 図4は,ラマン散乱強度のレーザーエネルギー依存性である.レーザーエネルギー0 J/cm2の結果より,イオン注入を行うことによりラマンスペクトルがブロードになり,結晶性が劣化していることが判る.一方,レーザーアニールにより結晶性が回復する.レーザーエネルギー1.4 J/cm2までは散乱強度が増加しており,結晶性が向上していることを示唆している.一方,レーザーエネルギー1.5 J/cm2以上では散乱強度が減少しているが,これは,アンドープウエハの場合と同様,表面に炭素層が形成されたためだと考えられる.ラマン散乱強度は減少しているが,スペクトル形状に差はなく,結晶性は良好である. 図3 Al注入ドープSiCウエハのラマンスペクトル 図4 Al注入SiCウエハのラマン散乱強度 3.3 VドープSiCの評価 図5にV注入ウエハのラマンスペクトルを示す.White spotは,0.9 J/cm2でレーザーアニールを実施した領域における異常部である(図6参照).Vドープウエハは室温でイオン注入を行っており,イオン注入後のラマンスペクトルでは全くピーク観測できないほど結晶性が大きく劣化している.レーザーアニール適用後は776 cm-1のピークが観測できるまで結晶性が回復している.また,964 cm-1のピークも観測されている. 図6に,V注入SiC試料の写真を示す.0.9 J/cm2でレーザーアニールを実施した領域に白い異常部(White spot)が発生している(写真上部).図7に,正常部とのWhite spotのCCDイメージを示す.White spotは,表面荒れが見られており,結晶性の回復も不十分である. 図5 V注入SiCウエハのラマンスペクトル 図6 V注入SiC試料(サイズ:1.2mm×1.2mm) (a) 正常部 (b) White spot 図7のCCDイメージ 4. まとめ Al注入およびV注入SiCのラマン分光分析評価より,レーザーアニールがSiCの結晶性回復に非常に有効であることが判明した. 謝辞 イオン注入試料を提供頂いた新日本無線株式会社殿並びにレーザーアニール処理を実施頂いたスクリーンセミコンダクターソリューションズ株式会社殿に感謝申し上げる. 本研究の一部は,「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成25年度~平成29年度)」の支援のもとに行われた. 文献 1)R. Rupp et al. : Proc. of the 25th Int. Symp. on Power Semiconductor Devices & ICs, p.51, 2013 242015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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