千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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目的とする.これにより,より現実に近い児童の行動をシミュレートすることが可能となり,Sottoの実証実験における正確性の確保も期待できる. 2.地域情報と行動履歴を用いた目的地推定手法の提案 2.1システム構成 本研究で提案するSottoの概要を図1 に示す.図1に示す通りSottoでは3つのモジュールを用いて児童の目的や目的地を推定する.具体的には「移動履歴による目的地推定」,「施設訪問履歴による目的地推定」,「イベント参加履歴による目的地推定」の3つの目的地推定モジュールである.これら3つのモジュールが並列で動作する構造になっており,通学路が工事中などの状況に応じて,それぞれの手法の重みを変化させる.提案手法では,地域情報や児童の行動履歴を利用して「児童の好みの施設」や「児童の好みのイベント」を抽出し,それらを3つの推定手法で利用して様々な視点から推定を行い,そして,3つの推定手法間で推定結果を交換し合うことで,目的地推定の高度化を実現する.具体的には,児童の行動履歴とWeb・地図データから,移動履歴,施設訪問履歴,イベント参加履歴を抽出する.その後,各履歴を曜日ごとに分類し,移動履歴は交差点や道路,施設等の主用ポイントをノードとしたツリーで表現し,施設訪問履歴とイベント参加訪問履歴は,施設訪問回数,イベント参加回数を付加したリスト形式で表現する.目的地推定をする際には,推定する日の曜日に対応したツリー・リストに対して,条件付確率等を用いて走査を行い, 目的地を推定する.走査の際には,児童の現在位置から,通り過ぎた場所にある施設やイベントに対しては,条件を厳しくするなどの方向の考え方も取り入れて推定精度の向上を目指す. 2.2児童モデルの提案 Sottoでは,児童モデルとして,図2に示す5種類の情報と,図3に示す情報や移動履歴などから抽出された知識のモデルを使用する.これらのモデルは,児童1人に対して1セット作成する.これにより,多くの児童のより詳細な動作をシミュレートすることが可能になると考えられる.また,現状では児童個人にターゲットを絞っているが,今後は児童間の関係なども考慮したモデルづくりについて検討を進めていく. 図2: 児童モデルに用いる情報の定義 図3: 児童モデルに用いる知識の定義 3.シミュレーション環境の構築の検討 提案した児童モデルに基づき,Sottoのための児童行動シミュレーション環境の構築に関する検討を行った.シミュレーション環境として,本研究では株式会社構造計画研究所が開発したartisoc3.0を使用することにした.artisoc3.0はマルチエージェントシミュレーションシステムであり,追加のパッケージを使用することで実際の地図データを用いた人間行動のシミュレーションが可能になると考えられる(図4). 図4: artisoc3.0の動作画面 4.まとめ 本研究では,Sottoにおいてより正確性の高い検証実験を行うために,高度な児童の行動シミュレーション環境の構築に関する検討を行った.そこで,高度な児童の行動シミュレーション環境の構築のために,児童モデルの再設計と詳細なモデルの検討を行い,それに基づくシミュレーション環境の選定を行い,シミュレーション環境には株式会社構造計画研究所が開発したartisoc3.0を使用する事にした. 今後は,児童モデルに基づく児童エージェントの作成と,実証実験の対象とする地域の選定及び,その地域を用いたシミュレーション環境の構築を行っていく予定である. 施設に関する知識::= ⟨ 施設種別⟩+ ⟨ 施設名称⟩ ⟨ 使用目的⟩+ ⟨ 場所⟩ イベントに関する知識::= ⟨ 施設名称⟩ ⟨ 開始日時⟩ ⟨ 終了日時⟩ ⟨ イベントの種別⟩ 好みの施設に関する知識::= ⟨ 施設種別⟩ ⟨ 訪問回数⟩ 好みのイベントに関する知識::= ⟨ イベント種別⟩ ⟨ 参加回数⟩ 推定方式に関する知識::= ⟨ 推定方式⟩ ⟨ 関連情報⟩+ ⟨ 増減幅⟩ 位置情報::= ⟨ 時刻⟩ ⟨ 緯度⟩ ⟨ 経度⟩ 移動経路::= ⟨ 位置情報⟩+ 移動履歴::= ⟨ 日付⟩ ⟨ 移動経路⟩ 施設情報::= ⟨ 施設名称⟩ ⟨ 場所⟩ ⟨ 周期性⟩ イベント情報::= ⟨ 場所⟩ ⟨ 日時⟩ ⟨ イベント名⟩ ⟨ 周期性⟩ 行動情報::= ⟨ 位置⟩ ⟨ 時刻⟩ ⟨ イベント名⟩ 行動情報(一日)::= ⟨ 行動情報⟩+ 行動履歴::= ⟨ 日付⟩ ⟨ 行動情報(一日)⟩ 202015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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