千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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2.2 数値解析結果の検討 Keysight社の有限要素法数値電磁界ソフトEMProを用いて,図1に示した3種類の回路に関して,数値解析結果を実行した。各回路形式の共振周波数-出力電力特性を図2に示す。 図2から,共振周波数の設定によって出力電力の大小関係が異なり,どの回路形式が優れているかを一概に判断できない結果となった。回路(a)の基本形の回路では,3MHz付近に極大値が現れることが分かった。また,回路(b)の送電側分離形の出力電力が共振周波数によって変動しづらく,かつ,出力電力が他の回路形式よりも低くなりやすい特徴を持つのは明らかである。最後に,回路(c)は,今回実行した数値解析結果の中では1MHzで出力電力が最大となり,周波数の増加と共に,出力電力が減少するという傾向になった。 これらの結果から,無線電力伝送システムのおける回路形式によって,受電側の電力は大きく影響を受けることが明らかになった。 図2 各回路形式の共振周波数-出力電力特性 3.金属板の影響に関する検討 無線電力伝送システムの実験構成を図3に示す。一定距離で送電側コイルの背面にある3種類の金属板(Al,Cu,Fe)により効率の影響を調べた。その影響を抑制するため,送電側コイルと金属板の間に逆巻きコイルを導入し,巻き数がそれぞれ1回,5回,10回巻きと変化させ実験を行った。 金属板による効率の影響と軽減策の結果を図4に示す。金属を無線電力伝送システムの近いところに置くと,システムの効率が減少した。また,比透磁率がほぼ同じであるアルミと銅板より,比透磁率が大きい鉄板のほうが影響が大きかった。金属板の影響軽減策の実験結果について,逆巻きコイルを導入した場合は,金属板の効率に対する影響を抑えること 図3 無線電力伝送システムの金属板の影響実験 図4 金属の影響と逆巻きコイルを導入した結果 ができなかった。その原因は後方(コイルの金属側)の磁束を抑えたと同時に,前方の磁界も弱くなったと考えられる 4.まとめ 以上,3次元移動物体への無線電力伝送における回路形式を検討し,金属板の影響について検討した。その結果,回路形式によって,出力電力が大きく異なることが明らかになった。また,金属板の影響は,アルミと銅はほぼ同じくらいであるが,鉄が最も影響があり,金属板の影響を軽減する方法は,現時点ではかなり困難であることが分かった。 本研究に関する主な発表論文 (1) 岩渕大樹・亀田幸平・相知政司:「無線電力伝送システムにおける回路形式と出力電力の検討」,平成27年電気学会全国大会,No. 4-129,(2015-03) (2) 頼 寒・高橋和史・相知政司:「磁界共振方式無線電力伝送システムにおける金属板の影響」,平成27年電気学会全国大会,No. 4-130,(2015-03) 参考文献 (1) Kurs, Andre, et al. "Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances." Science,317.5834, pp.83-86,(2007). (2) Takehiro Imura, Hiroyuki Okabe, Yoichi Hori: "Basic experimental study on helical antennas of wireless power transfer for Electric Vehicles by using magnetic resonant couplings", Vehicle Power and Propulsion Conference, pp.936-940, 2009 (3) Xin Gong, Xiaoying Lü, Zhigong Wang: "Improved design of receiving coil for wireless transcutaneous energy transmission", Information Science and Technology, 2011 International Conference, pp.1331-1334, 2011 182015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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