千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
23/168

研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 結晶構造および対称性を理解する為の立体模型の開発 研究課題名(英文): Development of three-dimensional models for understanding crystallographic structures and their symmetry 研究者: ○手嶋 吉法 千葉工業大学 TESHIMA Yoshinori 工学部 機械サイエンス学科 教授 池上 祐司 理化学研究所 IKEGAMI Yuji 技術基盤支援チーム 研究嘱託 山澤 建二 理化学研究所 YAMAZAWA Kenji 技術基盤支援チーム 副チームリーダー 渡辺 泰成 NPO法人科学芸術学際研究所 WATANABE Yasunari 研究開発部長 松本 崧生 金沢大学 MATSUMOTO Takeo 名誉教授 モレトン ムーア Royal Holloway University of London MOORE Moreton 名誉教授 1. はじめに 対称性の概念は,科学技術のあらゆる分野で活用され,物質や自然現象の理解あるいは構造物の設計や解析の効率化等に役立っている.特に,物質の周期構造を記述する結晶学においては,対称性が重要な役割を果たしている.しかし,対称性を日常的に利用する研究者であっても,必ずしも対称性の原理を深く理解している訳ではない.今日の結晶構造解析では,解析装置およびソフトウエアが該当する空間群を割り出してくれるが,得られた結果を系統的な群論の側面から洞察しなくては,誤った理解に終わることもある.しかし,その一歩踏み込んだ洞察は,多くの研究者にとっても容易ではない. このような対称性に関する理解不足は,科学技術の基盤を脆弱にするものであり,何らかの対処が必要である.我々は,一般向け,学生向け,あるいは研究者の為に,立体模型を開発し,対称性ならびに結晶構造の理解に役立てることを目指している. 周期的な点配置を数学的に体系化したものが空間群(結晶群)である.実際の結晶構造は3次元に存在するが,2次元的な規則性を示すものもあり,2次元の結晶学およびその数学的基盤である平面群(2次元結晶群)もしばしば重要となる. 点群と空間群の種類は,1次元では点群が5種・空間群が7種,2次元では点群が10種・空間群が17種,3次元では点群が32種・空間群が230種である.本プロジェクト(立体模型プロジェクト)では,最終的にはこれら全ての空間群を理解し易い立体模型として実体化することが目標であり,更には,空間群の相互関係を理解する上で役立つ立体模型の開発を目指す.平成26年度は,以下の様な研究開発をおこなった. 2.研究の内容 (1)2次元結晶学を理解する為の触覚用結晶点群の開発 一般向けおよび視覚障害者の為に,触覚用結晶点群を開発した.平面(2D)の結晶点群は10種類あり,それぞれ国際的に対称記号が決められている.視覚障害者は,線や記号を手でなぞって,その対称性を理解するが,線や記号は抽象化されているので,直ちにこれだけで対称性が理解されるかどうかは疑問である.そこで,家紋のようなパターンを結晶点群に対応させて,より具体的に結晶対称性を理解させる方法を考えた.立体の場合は,結晶点群には3D版もあるが,空間認識は2Dの場合に比べてはるかに理解が難しい.3D結晶点群の模型を作って触らせる場合も工夫が必要である.今回は対称を多く含む立体に中で最も理解しやすい立方体を使って,視覚障害者の空間認識度を測り,このデータを元に3D結晶点群の表現を理解しやすいものにする工夫の糧にする.文献[9] (2)3次元結晶学を理解する為の触覚用立体模型の開発 視覚障害者が立体の結晶構造を理解するためには,平面のときと同じように3次元の結晶点群の理解が必要であるが,平面を十分マスターすることなしに3Dの理解はありえない.システマティックな3Dの対称性は無理でも,最も簡単で対称要素が多い立方体を使って具体的に理解すること112015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です