千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 3Dプリンタによるサンドイッチ積層複合材芯構造のテーラーメイド設計 研究課題名(英文): Tailor-made design for 3D printing manufacturing of the core structures in sandwich composite laminates 研究者: ○鈴木 浩治 千葉工業大学 SUZUKI Kohji 工学部 機械サイエンス学科 教授 1. はじめに 高い比強度・比剛性を有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を上下スキン(表皮)層とし,その間に厚肉・低密度なコア層を挟んだサンドイッチ構造の芯(コア)材層として実用に供しているものは,硬質発泡セル材かアルミやアラミド紙のハニカム構造だけであるのが現状だが,芯(コア)材層の厚さ方向へも(規則的もしくは不規則な)幾何形態の変化を許容し,様々な境界条件下において,重量や剛性を目的関数として最適化された位相形態や形状・寸法を見出し,それを実際に設計・製造側に提示することは,3Dプリンタなど極めて柔軟な造形能力を備えた新たな製造技術が急速に普及しつつある今日において特に意義深い. そこで本研究では,汎用コード MSC Nastran の提供するTopology Optimization機能を活用し,CFRPサンドイッチ積層複合材芯構造(コア層)に対して,これまでの常識にとらわれない構造形態を位相最適化により見出し,さらに最適化結果を3Dプリンタにより成型するテーラーメイド設計製造プロセスを提案することを目標とする.今回は,MSC Nastranで採用されている密度法(SIMP法)を用いての最適化事例を示しながら,その有効性などについて検討する. 2.位相(トポロジー)最適化 (1) 最適化手法について 構造最適化手法の一つとして,寸法や形状だけでなく幾何形態をも最適化対象とする最も設計自由度の高い手法が位相(トポロジー)最適化である.この手法では,連続体中の任意点xに0か1の2値を取りうる特性関数を設定し,当初弾性率0Eの材料で満たされていた設計領域に対し0eEEで表される材料の最適分布を探索していく.つまり構造最適化問題を材料配置問題と解釈し直している.これにより形状だけでなく,領域内に新たに空孔を生成したりすることも可能となる.ただし,厳密に0または1の2値のみ取り得る特性関数の設計空間を,計算機を用いた有限な有効桁の範囲内で数値的に近似計算するための取り扱い方法の開発が別途必要となり,これまでに周期的マイクロストラクチャを想定した均質化法や,0から1までの連続的な値を取りうる正規化密度(normalized density) ex(実密度は0eex)にて設計空間を緩和した密度法が提案されている. 最も一般的な密度法(べき乗法)では,最適化前の弾性特性0Eに0から1までの値を連続的にとる正規化密度min(1)eexxxとペナルティ係数1pを用いて, 00min,0 void,1 fully solidpeeeeEExExxx (1) により最適化構造を模索していく(Solid Isotropic Material with Penalization, SIMP法).ペナルティ係数pについては,一般に材料のポアソン比が1/3なら,2次元問題では3以上,3次元問題では2以上とする. (2) 密度法による位相(トポロジー)最適化プロセス 具体的な最適化のプロセスを次式, lowup121target001lowupminmin()()0,,design variables: ,,,,objective function: ()()constraints ()0constraints 0,10nTNNTTeeeeeNeeeeeeechxxxcxhVMassVgxxgxxxxg0g0xxfuuKux (2) にて表されるコンプライアンス最小化(剛性最大化)問題を密度法で解く場合について概説すると,①最適化対象の有限要素法(FEM)を用いた数値解析モデル(FEMメッシュ,材料特性,変位拘束,荷重など)を作成する.②最適化したい設計領域を固定設計領域Dとし,その領域内の有限要素おのおのに正規化密度exを設計変数として設定する.③固定領域Dに対する最適化のターゲット体積(最適化により削られていく体積の上限)0を指定する.④最適化の試行ループを作り,FEM数値解析ステップ毎にポストプロセスとして目的関数である全ポテンシャルエネルギ値および制約条件である固定設計領域Dのターゲット体積(要素ごとに設計変数である正規化密度を要素の実体積に乗じた上での全要素の総和)を評価し,収束判定する.⑤未収束なら目的関数(全ポテンシャルエネルギ値)と制限条件(ターゲット92015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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