千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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予混合圧縮着火機関とした.このとき,圧縮比16,容積比15%である.燃焼室の構造を図1に示す. 実験は回転速度1500rpm一定で,燃料流量,吸入空気温度を変えて行った.シリンダ圧力はクランク角0.5deg毎に採取し,熱発生率,図示平均有効圧,図示熱効率などを算出した.燃料は主室にエタノール,副室で先に燃焼が行われるよう,副室にはn-へプタンを使用した.実験では,副室に供給するn-へプタンの流量を一定とし, 主室に供給するエタノールの流量を変化させた. エタノールの供給量は, シリンダ圧力にノッキングの発生と見られる微振動が認められた点までとした. 排ガスについては,CLDを用いてNOx濃度を測定した. 4.実験結果および考察 4.1. 運転範囲 本研究では図示平均有効圧の変動率をサイクル変動率とし,サイクル変動率10%未満で最大圧力上昇率1MPa/deg未満ともに満足するとき燃焼が安定していると定義した.安定燃焼が行われ,熱発生率において本燃焼方式のコンセプトである2段燃焼となるときの運転範囲を求めた.吸入空気温度が90℃ではエタノール当量比e 0.32~0.39,110℃では0.27~0.38,130℃では0.21~0.35,吸入空気温度にかかわらずn-へプタン当量比n 0.30~0.35の範囲でコンセプトどおりの2段の燃焼が得られた. 4.2. 燃焼経過 吸入空気温度110℃においてコンセプトどおりの燃焼が得られたとき,すなわち2段の燃焼が得られたときの燃焼経過を図2に示す.2段目の熱発生率に着目すると,ほぼ二等辺三角形の形状を示し,通常のHCCI燃焼と同様の燃焼が行われているものと考えられる.すなわち,実用回転域においても本燃焼コンセプトは実現可能であることがわかる.また,圧縮着火しにくいエタノールを燃料として使用しても比較的低い吸入空気温度でHCCI燃焼が可能である. 4.3. 機関性能および排ガス特性 n-へプタン当量比n 0.030一定で,エタノール当量比eを変化させたときの図示平均有効圧に対する図示熱効率,NOx排出濃度を,供試機関のベースであるディーゼル燃焼の場合とともに図3に示す.図中,コンセプトどおりの燃焼のときは●,そうでない時は○で示している.コンセプトどおりの燃焼が得られるときの図示熱効率はディーゼル燃焼の場合とほぼ同等か僅かではあるが上回り,今後の燃焼改善,運転条件の最適化によりディーゼル機関を上回ることが期待できる.しかし,コンセプトどおりの燃焼が得られるときのNOx排出濃度は,ディーゼル燃焼の場合よりは大幅に低いものの通常のHCCI燃焼よりは高くなっており,NOxの低減は今後の課題である. 5.まとめ (1) 実用回転域で, 燃料を毎サイクル供給し燃焼させた場合でも本燃焼方式のコンセプト通りの燃焼は可能である.(2) 本燃焼方式における図示熱効率はディーゼル機関と同程度かそれ以上が期待できる.(3) 高負荷域の運転及びNOxの排出量に関しては今後の課題である.(4)本燃焼方式はエタノールのような圧縮着火しにくい燃料でも適用可能である. 参 考 文 献 (1)佐々木他,日本機械学会論文集B編, 79巻800号, No.2012JBR0893, (2013年4月), pp.636 (2)石井他,第24回内燃機関シンポジウム講演論文集(2013) (3)石井他,2013年度自動車技術会関東支部学術研究講演会前刷集 (4)中島他,自動車技術会論文集,Vol35, No3, (2004年7月), pp.47-52 (5)中島他,自動車技術会論文集, Vol37, No3, (2006年5月), pp165-170 (6)D.Jun他,SAE paper 2004-01-1974 (7)鄭他, 自動車技術会論文集vol.45, No3, (2014年3月), pp.475-480 (8)山崎他,日本機械学会熱工学コンファレンス2007講演論文集, No07-5(2007), pp163-164 (9)関谷他,日本機械学会北海道支部第48回講演概要集(2009年11月) (10)John B. Heywood, Internal Combustion Engine Fundamentals (McGraw-Hill, New York) 1988 01234567-40-200204060020406080Crank Angle degRate of Heat Release J/degCylinder Pressure MPa110 ℃n= 0.0300.3810.3690.329e0.343図2 燃焼経過 05101520253035404590℃Diesel130℃110℃01002003004005000100200300400500600NOx ppmIMEP kPa90 ℃Diesel130 ℃110 ℃n= 0.030n= 0.030%Indicated Thermal Efficiency図3 機関性能および排ガス特性 82015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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