千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
17/168

研究項目:科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): ジルコニア式酸素ポンプによる極低酸素分圧雰囲気を利用したアルミニウム合金のフラックスフリーロウ付 研究課題名(英文): Flux-free brazing of aluminum alloys under ultra-low oxygen partial pressure prepared by zirconia oxygen pump 研究者: ○小澤 俊平 千葉工業大学 OZAWA Shumpei 工学部 機械サイエンス学科 准教授 1.目的 現在,自動車用熱交換器の殆どは,軽量化による燃費向上の観点から,密度が小さく熱伝導度が高いアルミニウム合金をロウ付して製造されている.その際,アルミニウムを多く含む合金は非常に酸化しやすいため,それが溶融ロウの進展を阻害し,ロウ付性を著しく低下させる.したがって,酸化皮膜の除去および生成抑制のためのフッ化物系フラックスの使用が欠かせない.しかし近年のハイブリッド自動車や電気自動車などには,多くの電子部品が使用されているため,このフラックスの残渣が組み立て中や走行中にそれらに付着し,故障を引き起こす原因となることが問題視されている.また,冷却通路を狭くした高性能熱交換器においては,フラックスの残渣による目詰まりの問題も生じている. アルミニウム合金のフラックスフリーロウ付を量産するために,一般的に採用されている手段として,真空ロウ付がある.この方法では,母材またはロウ材に含まれる少量のMgが,真空中加熱によって蒸発し,それが酸化皮膜の破壊や成長抑制に寄与する事で,ロウ付を可能とする.しかし,フラックスロウ付に比べて接合性が劣るだけでなく,Mgの蒸発に係わるメンテナンスが必要となる.また,防食性向上のためにしばしば添加されるZnも,蒸気圧が高いために使用できない. 本研究では,真空ロウ付に代わる新しいアルミニウム合金のフラックスフリーロウ付の開発のために,ジルコニア式酸素ポンプを用いた極低酸素分圧雰囲気の有効性について検討した.ジルコニア式酸素ポンプでは,固体電解質である安定化ジルコニア管の隔壁に電位差を与えることで,内部を通過するガスの酸素ポテンシャルを任意に制御することできる(図1).また,この雰囲気におけるアルミニウム合金のフラックスフリーのロウ付に及ぼす加熱速度や保持時間の影響についても検討した. 2.実験方法 図2に本実験で用いた試料および装置概略を示す.本研究では,間隙充填法によってロウ付性を評価した.この方法では,A3003の表面にAl-Siロウ材をクラッドしたブレージングシートを水平材とし,その上に間隙を設けたA3003の垂直板を設置する.これを加熱するとロウ材が溶融し,表面張力と濡れによって間隙に進展するので,その長さでロウ付け性の良し悪しが評価できる. 試料を密閉チャンバ内に設置した後,高純度窒素ガスをジルコニア式酸素ポンプ(キヤノンマシナリー製 ULOCE-500)を通して循環させた.酸素ポンプの駆動温度である600℃において,雰囲気酸素分圧(Po2)が10-30atmオーダーとなった後,予め加熱しておいた電気炉を移動させることで,試料を595℃まで急加熱した.このとき試料温度は,それに直接取り付けた熱電対によって確認した.試料を595℃で任意の時間保持した後,電気炉を再度移動することで急冷し,ロウの進展長さや表面状態,フィレットのふらつきを観察した. 図1 ジルコニア式酸素ポンプの概略 52015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です