千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
164/168

この過渡電流波形から)A(Nu32の実効励起寿命を決定し,大気汚染物質による)A(Nu32の失活レートを決定した。 試料ガスはN2 (純度99.999 %)にC2F6 (純度99.5 %)を 1.00 ppm混合したガスとN2 (純度99.999 %)にC3F8 (純度99.5 %)を1.04 ppm混合したガスを使用した。 3.実験結果 図3にN2 / C2F6混合ガス中で過渡電流波形から求めた)A(N32uの実効励起寿命τ1の測定値を示す。○,◇,▽,□で表したτ1は,ガス圧力の増加に従い両対数グラフ上で比例して上昇している。実線で示した曲線は,)A(Nu32が拡散と衝突脱励起により消滅することを考慮した理論から求まる実効励起寿命曲線(3)(4)であり,ほぼ全ての測定点が曲線上にあることがわかる。この理論曲線のカーブフィッティングから得られたC2F6による)A(Nu32の失活レートは(2.3±1.8)×10-15 cm3/sであった。 同様に,C3F8による)A(Nu32の失活レートは(1.6±0.8)×10-14 cm3/sであった。 図4は,これまで著者らが測定してきた様々な添加ガスによる)A(Nu32のレートとそのガスの質量数の関係を表している。今回測定したC2F6とC3F8による)A(Nu32の失活レートは,四角で囲っている。クエンチガスの質量数が増すと)A(Nu32の失活レートは大きな値になる傾向が見て取れる。しかし,Fを含むガスは明らかに他のガスより失活レートが小さいことがわかる。さらに,○で示した無機物はHを含む有機物と同じグループに分けられることがわかる。これらの結果から,C-F結合をもつ分子による)A(Nu32の失活レートはC-H結合をもつ分子によるそれより失活レートが小さいことをC2F6及びC3F8で確認した。 4.まとめ C2F6及びC3F8による)A(Nu32の失活レートを決定し,質量数と失活レートの関係を議論した。 本研究に関する主な発表論文 (1) S. Suzuki, H. Itoh : “Collisional quenching rate coefficient of metastable nitrogen molecules N2(A3Σu+) by styrene”, Europhysics Conference on Atomic and Molecular Physics of Ionized Gases XXII, (Greifswald, Germany, July 15-19) P2-03-03 (2014) (2) 鈴木進,伊藤晴雄: “Ne準安定励起原子の実効励起寿命測定”, 照明学会 第29回光源物性とその応用研究会,LS-14-07, PE-14-05, AR-14-12, OM-14-10, 2014 (3) 鈴木,伊藤: “Ne準安定励起原子の実効励起寿命”, 平成27年 電気学会全国大会(東京都市大学),1-168,2015 参考文献 (1) 鈴木進・伊藤晴雄 : “キシレンによるN2(A3Σu+)の失活とキシレン分解生成物の陰極表面への付着による電流阻止作用”, 電気学会論文誌A,131(2),pp.82-88 (2011) (2) S. Suzuki, H. Itoh : “Collisional quenching rate coefficient of metastable nitrogen molecules N2(A3Σu+) by styrene”, Europhysics Conference on Atomic and Molecular Physics of Ionized Gases XXII, P2-03-03 (2014) (3) S.Suzuki, H.Itoh, N.Ikuta and H.Sekizawa: “Reflection of diffusing metastable gas molecules at the boundary”, J.Phys.D: Appl. Phys., 25, pp.1568-1573 (1992) (4) S.Suzuki, H.Itoh, H.Sekizawa and N.Ikuta: “Loss Processes of 32N(A)uby Harmful Gases”, Jpn. J. Appl. Phys., 36, pp.4744-4746 (1997) Mass number Collisional quenching rate coefficient CH4CH2ONOCO2(CH3)2COC6H6CF4C6H5CH3CH2FCF3C8H10CCl2F2C2F6p-m-o-C4H8O2C8H8N2O2H2COC3F805010015020010-1810-1610-1410-1210-1010-8図4 )A(Nu32のレートとそのガスの質量数の関係Gas pressure p0 (Torr)Effective lifetime (ms) d=0.7cm d=1.0cm d=1.2cm d=1.5cmN2/C2F6(1.00ppm)0.11100.1110図3 N2 / C2F6混合ガス中で測定した)A(Nu32の実効励起寿命 1422015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です