千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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画質が得られることがわかった.合成された画像を一部拡大した例(図3)より,BFとTVFは原画像をよく近似しているが,WFでは細部の再現性が劣る結果となった. 一方,表1にはテクスチャ分離フィルタに要した処理時間を示す.これより,BFで良好な合成結果が得られる6回再帰繰り返しの場合でも,TVフィルタの半分ほどの処理時間に抑えられることがわかる.以上より,画質/処理時間を総合的に勘案すると,バイラテラルフィルタを用いることが有効であると考えられる. 次に,パラメータを変化させた際の結果を考察する.TVFのλ値を低く(λ=10)設定しテクスチャ成分抽出を弱くした結果を図4に示す.この場合,骨格画像が原画と大きく類似する.テクスチャ成分が極めて弱いため,最終的な合成結果は原画に近くなる.木の表面のような不規則なテクスチャや,レンガの壁などテクストンが粗いテクスチャ画像についてはλ=80程度で分離を行うとテクスチャ成分がよく抽出される(図5).ただしこの場合には,骨格画像にもエッジ構造が残ってしまっているため,合成されたテクスチャ成分と加算すると,最終的な合成結果が不自然になる場合が見られた.画像圧縮の観点からみると,λが小さいと情報量低減の効果はあまりなく,λが大きいほど骨格成分が滑らかになるとともに,テクスチャ成分においては一部のパッチのみを符号化するので,大きな情報量削減が可能となる.ただし,λを大きくしすぎると,骨格画像と重ね合わせた際にエッジが不自然になるため,最適なパラメータ設定にはさらなる検討が必要である.なお,BFに関しても同様の結果が得られている. 5. まとめと今後の展開 分離型テクスチャ合成手法について,分離フィルタの種類と合成画像の画質の関係を検討した.今後は,実際の符号化を適用してRD最適化の観点からフィルタパラメータ最適化を図る予定である.なお,本研究の一部はJSPS科研費25330204の助成を受けて実施した. [参考文献] [1] A.A.Efros, W.T.Freeman, ”Image Quilting for Texture Synthesis and Transfer,” Proceedings of SIGGRAPH 2001,pp.341-346,2001. [2] 長友陽介,八島由幸,“顕著性マップとポアソンブレンディングを用いたテクスチャ合成符号化の検討,” 画像符号化・映像メディア処理シンポジウムPCSJ/IMPS2014, P-1-01, 2014. [3] Yousuke Nagatomo and Yosihyuki Yashima, “Image Coding Method With Saliency-based Texture Synthesis and Poisson Blending,” Proceedings of International Workshop on Advanced Image Technology, IWAIT2015, OS28, No.89, Tainan, Taiwan, Jan., 2015. 表1.処理時間の比較(秒) image1 image2 image3 Bilateral 53.2444.81 56.74Wavelet 0.450.42 0.51TVF 113.1174.81 88.28 (a)Structure (b) Texture (c)Synthesized texture (d) Restoration ((a)+(c )) 図5.テクスチャ分離パラメータによる比較(TVF, λ=80) (a)original (b) BF(σ1=2, σ2=40, N1=6) (c)TVF (λ=80) (d)Wavelet(Daubechies97, N2=3) 図3.フィルタによる合成画像の比較(拡大) (a)Structure (b) Texture (c)Synthesized texture (d) Restoration ((a)+(c )) 図4.テクスチャ分離パラメータによる比較(TVF, λ=10) 1402015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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