千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科学研究費(基盤研究(C)) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 高度擬似表現を用いた超高圧縮映像符号化の研究 研究者: 八島 由幸 千葉工業大学 YASHIMA Yoshiyuki 情報科学部 情報ネットワーク学科 教授 1. はじめに 近年,4K解像度テレビなどに代表されるように,画像の高画質化・高精細化が進み画像情報量が膨大となり,JPEG,H.264/AVC,H.265/HEVCなどの標準圧縮方式では情報量の大幅な削減が困難となっている.中でも,画像中の複雑なテクスチャ領域では非常に大きな情報量が発生することが知られている.そこで,面積の大きなテクスチャ領域を効率的に表現できるテクスチャ合成手法を用いて大幅な画像情報量の削減を行う手法が研究されている.本研究では,テクスチャ合成に用いるパッチを抽出するためのテクスチャ分離フィルタに焦点を当て,フィルタの種類やパラメータに関する検討を行う. 2. テクスチャ画像符号化の概要 テクスチャ画像符号化の手順を図1に示す.この手法では,まず原画をテクスチャ領域と非テクスチャ領域に分割る.非テクスチャ領域は通常のJPEG等で符号化するが,テクスチャ領域は,その一部のパッチのみを符号化して伝送する.受信側では復号パッチを基にして画像合成技術により領域拡大し,該当するテクスチャ領域に貼り付ける.テクスチャ領域の面積が大きい場合には大幅な情報量の削減が見込める. 3. テクスチャ分離フィルタ テクスチャ画像符号化の研究を行うに当たり,検討を行うポイントが複数存在する.その中の一つとして,画像を大局的な変化を表す骨格成分と,細かな変化を表すテクスチャ成分とに分離を行ってから処理を行うという考え方がある.この場合,パッチはテクスチャ成分から選択することとなる.本研究では骨格/テクスチャ分離に用いる各種フィルタについて考察を行う.今回,バイラテラルフィルタ(BF),Waveletフィルタ(WF),Total Variationフィルタ(TVF)の3種類を対象とした.図2に処理フローを示す.テクスチャ合成は分離されたテクスチャ成分上で行われる. 3.1. バイラテラルフィルタ BFはエッジ保存型のフィルタで,式(1)に示すようにガウシアンフィルタの画素間距離に応じて重みを変更させる手法に,画素値間距離に応じて重みを変化させるという考えを加えたものである. f(i,j), g(i,j)はそれぞれ入力画像,出力画像,Wはフィルタ窓の大きさであり, である.ここで,σdとσvはそれぞれ画素間距離および画素値間距離に対するガウス広がりパラメータである.また,再帰的な繰り返し処理回数N1によってもフィルタリング効果が異なることが知られている. 3.2. Waveletフィルタ WFは低域通過フィルタと高域通過フィルタを,低域側生成画像に再帰的に施して分割することにより多重解像度表現を行うものであり,分析・合成フィルタの種類および再帰的分割回数N2が制御パラメータとなる. 3.3. Total Variationフィルタ TVFでは以下の式(4)を最小とする画像uを求め骨格画像とする. ここで,uは骨格画像,u0は原画像,∇uはu上での各画素とその近傍画素との差分であり,λは原画像との類似度をどれだけ重要視するかの重みパラメータである.λを変更することで骨格成分とテクスチャ成分の抽出度合いを変化させる. 4. 実験結果と考察 3種類のテスト画像に対して,分離フィルタの種類および前記フィルタパラメータを変化させてテクスチャ成分を分離し,テクスチャ成分画像上からパッチを抽出してimage quilting手法[1]によって原画像と同じサイズの合成画像を得た.パッチの大きさはテクスチャエレメントの大きさに対して十分大きく設定している. 実験により,BFでは,σvを大きめに設定し再帰繰り返しを6回程度とし,TVFではλを80程度とすると最適なSegmentationOriginal ImageNon-textureregionTextureregionPatch CutTexture synthesisAddOutput Image図1.テクスチャ画像合成符号化の概要 ・Total variation filter・Bilateral filter・Wavelet filterTexture regionPatch CutImagequiltingOutputImage+- 図2.フィルタによるテクスチャ成分分離 )1(),(),(   WWnWWmijmnmnWWnWWmijmnmnDGDGnjmifjig)3(2/)),(),((exp()2()2/)(exp(22222            vijmndmnnjmifjifDnmG)4())(21(min20   dxuudxuCu1392015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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