千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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3. 計算結果及び考察 3.1翼回転角αに対するパワー係数Cp 図4に,ある瞬間に1枚の翼に働いている流体力の関係を示す.翼面上に働く圧力とせん断応力を翼面に沿って積分すると,抗力FDと揚力FLが得られる.FDとFLの周方向成分FDθとFLθを足し合わせたF*=FLθ-FDθが回転力となり,F*rが回転トルクTとなる.このTから式(2)を使ってCpが得られる. 図5のように,翼がちょうど風と対向する位置にあるとき,その翼の回転角をα=0°と定義する.図6に,その回転角αに対するパワー係数Cpの羽根車1回転分の計算結果を示す.Wing 1とWing 2は180°離れた2枚の翼を便宜上区別しているだけあり,これらの翼は軸対称の関係にあるので,Wing 1とWing 2の曲線は位相が180°ずれた同じ曲線である.また,Wing 1とWing 2を足し合わせたものが,羽根車全体のパワー係数Cpとなる(図中,Overallで示す). 図6においてWing 1に着目すると,α=40°~210°の範囲でCpは正の値を示しているが,α=210°~40°の範囲でCpは負の値を示している.すなわち,1枚の翼は,流体からエネルギーを受け取るタービンの働きをする領域と,流体にエネルギーを与えるポンプの働きをする領域を交互に通過する. 3.2翼まわりの圧力分布 図7に,Wing 1のCpが最大となる瞬間であるα=84°のときの翼周りの圧力分布を示す.翼の外周側の圧力は内周側の圧力に勝っており,確かに回転力すなわち回転トルクが大きくなることが理解できる. 図8に,Wing 1のCpが最小となる瞬間であるα=318°のときの翼周りの圧力分布を示す.翼の内周側の圧力は外周側の圧力に勝っており,負のトルクが発生している.翼の外周側では境界層がはく離して失速している状況が観察される. 4.まとめ ジャイロミル風車の羽根車まわりの流れを数値解析することにより,以下のことがわかった. 羽根車の翼は,回転トルクが正となる領域と負となる領域を交互に通過する. 風車の効率向上を図るためには,正トルクを増加させるか,負トルクを減少させるかの二つの方法がある.前者には翼が第2象限にあるとき内周側に揚力の働く翼型が望ましく,後者には翼が第1象限にあるときにはく離を抑制する翼型が適している. 本研究に関する主な発表論文 (1) Ejiri, E., Iwadate, T., 10th Pacific Symposium on Flow Visualization and Image Processing, E-Book Proceedings, PSFVIP 10-73 (2015). (2) Ejiri, E., Iwadate, T., Proceedings of the ASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference 2015, AJK2015-28401 (2015). 参考文献 (1) 関和一,牛山泉,垂直軸風車,パワー社,pp.65-68, (2011). (2) Ferreira, C. S., Kuik, G. and Bussel, G., 45th AIAA Aerospace Sciences Meeting and Exhibit, pp.1357-1367 (2007). 図6 翼回転角αに対するパワー係数Cpの変化 図5 翼回転角αの定義 図7 翼まわりの圧力分布(α=84°) 図8 翼まわりの圧力分布(α=318°) V V V 図4 翼に働く流体力 V 42015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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