千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科学研究費(挑戦的萌芽研究) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 移入種生物がもたらす生態系影響評価のためのモデルエコシステムの汎用化に関する研究 研究課題名(英文): Standardization of Experimental Model Ecosystem for Environmental Impact Risk Assessment of Alien Species 研究者: ○村上 和仁 千葉工業大学 MURAKAMI Kazuhito 工学部 生命環境科学科 教授 1. はじめに 生態工学を活用した環境修復手法の一つとしてバイオマニピュレーションが注目されている.バイオマニピュレーションは,食物連鎖を利用し,過剰増殖した植物プランクトンの抑制や富栄養状態となった水質を改善しようとする環境修復手法である.電力などのエネルギーが従来の物理的水質浄化法,化学的水質浄化法と比較して低コストである利点が挙げられるが,生物を利用するため,外来種(Alien Species)による生態系の侵略という生態学的問題を伴う.しかしながら,バイオマニピュレーションを実施する前段階としての生態系影響評価試験は確立されておらず,水圏生態系をはじめとする一般湖沼生態系の構造を含有した生態系影響評価試験法の確立は重要な課題である.影響評価試験には,個体数変動やP/R比(光合成による生産/呼吸量の比)のような生態系機能に基づいた規格による評価が必要である.本研究では,バイオマニピュレーションにおける導入生物に対する基礎的知見の集積を目的として,高い再現性と系の安定性が特徴であるGnotobiotic型マイクロコズムを用いて構成微生物群の個体数変動とP/R比に着目して検討を行った. 2.研究方法 (1)供試マイクロコズム マイクロコズムは自然水域の一部をフラスコ内で培養したものであり,温度や照度,有毒物質の添加等人工的に様々な条件を組み合わせることで,生態系システムに及ぼすさまざまな影響をリスク評価できる.マイクロコズムは構成生物種の個体数が安定するまで14日間程度必要であり,培養開始14日を境に変動期と安定期に分類される.変動期において各構成生物は培地を基に増加,減少を繰り返し,やがて構成生物種は安定した個体数を維持し安定期となる.本研究で用いたGnotobiotic型マイクロコズムは種構成が既知であり,実環境を培地としたNaturally-derived型,環境水と培地を混合したStress-selected型よりも影響評価試験に必要な安定性と再現性の面で優れている.生産者 図1 Gnotobiotic型マイクロコズム として2種の緑藻類Chlorella sp.,Scenedesmus sp.,1種の糸状藻類Tolypothrix sp.,捕食者として1種の原生動物繊毛虫類Cyclidium glaucoma,2種の後生動物輪虫類Lecane sp.,Philodina erythrophthalma,1種の後生動物貧毛類Aeolosoma hemprichi,分解者として4種の細菌類Bacillus cereus,Pseudomonas putida,Acinetobacter sp.,Coryneform bacteriaの組み合わせで構成されている. (2)培養方法 本研究では,Gnotobiotic型マイクロコズムとしてN type(栗原タイプ)マイクロコズムを用いた.マイクロコズムの培養は,ポリペプトン濃度を100mg/l となるように調製したTP培地(Taub+polypepton) 200mlを300ml容三角フラスコに入れ,種として安定期にあるN typeマイクロコズムを10ml接種した後,25℃,2,400lux(明 12hr.,暗 12hr.)の条件で30日間行った. (3)導入種負荷 本研究ではマイクロコズムにおける最上位捕食者としてA.hemprichi,P.erythrophthalmaを導入種として想定した.A.hemprichiは凝集体摂食者であり,細菌および原生動物などの微生物を摂食する.P.erythrophthalmaはろ過摂食者であり,細菌などを摂食する.導入はマイクロコズム培養開始16日目に行い,添加(負荷)量は16日目における現存量の1,10倍とした. (4)生物相および個体数観察 培養開始後、0,2,4,7,14,16,18,20,23,30日目にマイク1332015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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