千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
135/168

研究項目:科研費採択者助成金(最終年度) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 電磁浮遊炉を用いた溶融ニッケルの表面張力に対する雰囲気酸素活量の影響 研究課題名(英文): Influence of oxygen activity on surface tension of molten metals 研究者: ○小澤 俊平 千葉工業大学 OZAWA Shumpei 工学部 機械サイエンス学科 准教授 1.目的 近年の材料プロセスは,製品の高性能化,高品質化に対する高い要求に応えるため,多様化,複雑化の一途を辿っている.そこでその最適化や,開発期間の短縮,開発コスト削減の観点から,従来の実験の繰り返しだけでなく,数値シミュレーションを併用することが重要となっている.その際,溶接や鋳造,結晶成長などの自由表面を有する高温融体プロセスでは,表面形状やメニスカスの角度を決めるための表面張力の値が必要となる.さらに表面張力は,自由表面で発生するマランゴニ対流[1]の影響を考察するためにも必須となる. しかしながら,従来報告されてきた高温融体の表面張力は,測定者間によるバラツキが多く,温度係数に至っては一桁も違う場合がある.この理由の1つとして,これまで主に用いられてきた静滴法などの容器を用いた測定では,高温で試料と測定治具との化学反応が避けられないため,データが比較的低温に限られていることが挙げられる.また別の理由として,強力な表面活性元素である酸素は,室温においても気相として雰囲気中に存在するにも係わらず,それが殆ど考慮されていないことも挙げられる[2,3].特に,試料の酸化を抑制する為に,水素や一酸化炭素混合ガスによる還元雰囲気で測定された表面張力は,温度だけでなく,H2OやCO2の生成平衡に起因した酸素分圧の温度依存の影響を受けている可能性がある[4]. 金属融体の正確な表面張力を測定するための最も有効な方法の1つとして,電磁浮遊炉を用いた液滴振動法がある.この方法では,試料を電磁力によって空中に浮遊させた状態で溶融し,その表面振動数から表面張力を計算できるため,試料の容器からの汚染を完全に回避し,従来よりも高温での測定が可能である.また,試料加熱中の雰囲気制御も可能である.本研究では,この電磁浮遊法とH2-H2Oガス平衡を利用した雰囲気酸素分圧(Po2)の精密制御を組み合わせ,溶融ニッケルの表面張力を,従来よりも正確かつ高温まで測定することを試みた.また,表面張力に対する雰囲気の影響を明らかにする事を目的とした. 2.実験方法 図1に,本研究で用いた装置概略を示す.600-900mg程度の角形に切断した高純度ニッケルを石英試料ホルダに載せ,電磁浮遊コイル内の石英ガラスチャンバ中にセットした.次に,Ar-He-H2-H2O混合ガスを上部からフローし,電磁力によって試料を無容器浮遊溶融した.この時,測定中の雰囲気酸素分圧は,H2OとH2の混合比を調整することでH2Oの生成平衡によって制御した.なお水蒸気は,気化器へ送った高純度水が全て気化することを前提とした.また,配管経路での水蒸気の凝結を防止するために,それらは全て加熱保持した.さらに,雰囲気酸素分圧の値は600℃および650℃に加熱保持したジルコニア式酸素センサによっ 図1 電磁浮遊装置概略 1172015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です