千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 寒冷環境に対するヒトの体温調節応答の適応順序性および組織代謝との協関 研究課題名(英文): Cold adaptation in human thermoregulation 研究者: ○若林 斉 千葉工業大学 WAKABAYASHI Hitoshi 工学部 教育センター 准教授 1. はじめに 本研究では,繰返し曝露される寒冷刺激の違いにより,異なる体温調節応答を意図的に発現させ,曝露を繰返した期間前後に複数条件で体温調節応答の評価実験を行い,繰返された代謝応答と,それに伴い顕在化する代謝応答の適応多型性について,代謝成分および発現組織に見られる特異性や順序性を明らかにする.特に,ヒト骨格筋組織における非震え産熱の亢進に着目し,骨格筋組織および全身レベルでの代謝応答の適応現象ならびに両者の全身的協関を検討する. 図1は,代謝応答に見られる寒冷適応の一例を代謝成分(基礎代謝,非震え代謝,震え代謝)と発現組織(内臓,骨格筋,褐色脂肪細胞)に着目し,齧歯類とヒトについて模式的に表したものである. 褐色脂肪細胞骨格筋内臓内臓内臓内臓内臓震え代謝寒冷適応後(齧歯類)適応前寒冷適応後(ヒト)代謝率骨格筋基礎代謝骨格筋骨格筋骨格筋骨格筋非震え代謝骨格筋骨格筋褐色脂肪骨格筋褐色脂肪内臓 図1 寒冷誘発性代謝の発現組織と代謝成分に見られる適応現象モデル(若林作図) 2.研究の内容 1)測定機器の整備と研究計画 本研究課題を遂行する上での準備として,測定機器等の研究環境整備および実験計画を行った.骨格筋代謝を評価するためにレーザー組織血液酸素モニタ(BOM-L1TRW,オメガウェーブ)を,動静脈阻血用の加圧装置として,ラピッドカフインフレータ(AG101,E20,ホカンソン)を,また,8ch温度データロガー(N543R,日機装サーモ),投げ込み型チラー等の備品を購入した.加えて,科研採択者助成金(初年度)により,レーザードップラー式皮膚血流計(ALF21,アドバンス)を購入した.これらの機器の測定手法や分析方法を確立するために,初期段階の予備実験を行った. また,実験計画および測定評価項目を検討するために,寒冷環境における生体反応とその適応性に関する先行研究をレヴューし,総説を執筆した(Wakabayashi et al. 2015).特に骨格筋代謝に見られる適応現象のメカニズムを説明する上で,筋電図を併用した測定評価が必要と考えられた. 2)学会等における意見交換 国内で開催された国際シンポジウム,International Symposium on Human Adaptation to Environment and Whole-body Coordination(B)および国内学会のシンポジウム,日本生理人類学会第72回大会(C)において,骨格筋代謝に見られる寒冷適応現象に関する研究発表を行った.これらのシンポジウムの際に,日本生理人類学会の協力を得て,国内外の著名な研究者を招聘することができた.特に,近年ヒト褐色脂肪細胞における非震え産熱に着目している複数の研究グループとディスカッションを行ったことは有意義であった.近年の研究では,寒冷適応に伴う褐色脂肪細胞の活性の評価を行うものが主流となっており(van der Lans et al.2013; Yoneshiro et al. 2013),さらに,ベージュ細胞に関する検討も多数行われ始めており,この分野における研究の主流となっている.一方で,褐色脂肪をターゲットにしたこれらの研究グループにおいても,本研究で着目している骨格筋の代謝組織としての貢献度の高さを認識しており,骨格筋代謝に見られる寒冷適応現象の測定評価手法の確立が重要との意見が得られた.今後も国際会議や国内大会等で意見交換を続けていきたい. 3)共同研究の推進 近年,骨格筋から分泌されるイリシンという物質がベージュ細胞の発現に関与することが明らかになり,運動刺激や寒冷刺激がイリシンの分泌を促すと言われている(Lee et al. 2014).上述の学会における意見交換でも褐色脂肪細胞に加えて,ベージュ細胞,骨格筋細胞の代謝への貢献を組織連関として捉える重要性が示唆された.ここで,国内の研究者からイリシンに着目した共同研究の打診があり,現在までメール等を中心に実験計画を進めている.詳細を1152015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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