千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 身体知の獲得をめざす大学体育プログラムの開発:「知」と「科学」の再編をめざして 研究課題名(英文): Development of the University Physical Education Programs in order to Attain Body of Knowledge: Restructuring of Knowledge’ and ‘Science’ 研究者: ○森田 啓 千葉工業大学 MORITA Hiraku 工学部 教育センター 教授 1. 問題の所在 東日本大震災や資本主義経済の行き詰まりは、従来の近代的な知識や科学の限界を示していると考えられる。本研究の目的は、従来「知」の周縁におかれてきた「身体」から、学校教育や科学の改革をめざし、反省的考察によって新しい「知」「科学」の構築をめざすことである。大学の教養教育としての体育において、自分の「身体が直接感じること」「他者とのやり取りにおいて感じること」などを本音で記述し、それについて考察する(反省的考察)。この反省的考察のなかから理性(脳)を中心にしてきた近代的知識・科学に代わる新しい感性(身体)に基づく「知」「科学」の構築をめざす。 本研究では対象を大学体育プログラムとする。高等学校までは学習指導要領があり、授業内容は基本的に決まっているが、これは近代的な知に基づく教育である(本研究はこれらすべてを否定するわけではない)。教科書検定を経て公刊される教科書は3年から4年経ってある程度確固たる事実になった内容である。一方、大学教育は現在進行形の知を扱う。単に知識を獲得するだけでなく、学生と教員が主体的に教養を高め、学問を深化させる場所であり、従来の近代的な知識や学問のみならず、「身体」「無意識」「感性」を取組むことが求められる。 2. 研究内容 中央教育審議会(2002)「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」では、1991年の大学設置基準の大綱化以降の教養教育の軽視を批判し、各大学に教養教育の総合的見直しと再構築を強く要請している。その際求められる教養教育は、理系・文系、人文科学・社会科学・自然科学といった従来の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や、専門教育への入門科目ではなく、専門分野の枠を超えて共通に求められる幅広い視野から物事を捉える能力、課題探究能力の育成をめざすものである。大学における「体育・スポーツ科目」などの身体活動プログラムは、実体験を伴う教育として教養教育としても重視されるべきものである(大学審議会(2002)「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)」)。しかし、多くの大学における「体育・スポーツ科目」は、教養教育の内容とはいえず、「健康・健康教育」「生涯スポーツの実践」「体力向上」等を目標にしている。これらは大学教育の前提、周縁に位置づくものである。これらの目標は高等学校までの保健体育の繰り返しといえるため、大学教育に相応しいとはいえない。 大人数が意見を出し合って協力しなければ成り立たない身体活動プログラムは、本来であれば「課題探究能力」を育成する機会を提供できるものである。また身体を通じた相互活動は、多くの感情(否定的感情を含む)を喚起するものであり、社会性・コミュニケーション能力の育成、自立心、リーダーシップ育成などの涵養へ向けた教育実践が期待できるものである。大学における体育・スポーツ科目の内容を、これらの能力育成へ向けた身体活動プログラムへ組み替えることが求められる。 2-1.学生が授業運営を行うプログラム ニュースポーツ、卓球、サッカーなどにおいては、受講生全員が安全なおかつ楽しく取り組めることを課題に設定し、毎回数名のグループが授業運営を行う。ニュースポーツでは毎時間取り組む種目の決定を含めて学生が授業運営1132015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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