千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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まず,図1のアリール基を種々変化させ,複数の種類のアミンを付加させて,アミノ酸誘導体2を合成した. 予想通りの結晶性の高い付加化合物を定量的で得ることができた. 得られた共役付加物2のX線結晶構造解析により,コングロメレート結晶を探索したところ,2aがキラルな結晶空間群(P21)で結晶化することを見出した(図2). O(R)HNHNOPh2aspacegroupP21 図2.コングロメレートを形成した2aの構造式と結晶空間群 図3.コングロメレートを形成した2aの結晶パッキング図 図3には2aの結晶パッキン図が示してある。アミド基のカルボニル酸素原子とフェネチルアミンのNH基が分子間水素結合によりb軸方向に螺旋を形成し,それぞれの単結晶が同じ絶対配置の分子だけで形成されている. 次に,2aの絶対不斉合成を試みた。1aに1.5等量のフェネチルアミンを加え,少量のEtOH中,ガラスビーズとともに撹拌しながら,2aの生成と光学純度を追跡した. フェネチルアミンの付加反応は効率良く進行し,直ぐに2aの無色結晶が析出してきた. そのまま撹拌を続けたると,図4に示したように,ガラスビーズ存在下の反応では,14日目まではラセミ体のままであったが,15日目から光学純度が急激に上昇し,20日目には系内の2aの光学純度は91%eeに達した. ガラスビーズを用いずにスターラーピースによる撹拌だけを行った場合にも,光学活性体に変化するまでの日数は遅くなるものの,30日後には同じ光学純度の91%eeに達した. 02040608010005101520253035% eetime (day)in the presence of beadswithout beads 図4.アロイルアクリルアミドへのアミンの付加反応によるアミノ酸誘導体の絶対不斉合成 以上のように,アミンのエノン類への共役付加反応によるアミノ酸誘導体の絶対不斉合成に成功した. 3.まとめ 有機結晶の特異性を活用することで,アキラルな化合物を原料とし,不斉中心を生成する反応と動的結晶化により,アミノ酸の絶対不斉合成を開発することができた. アロイルアクリル酸誘導体へのアミンの共役付加反応からは,外的不斉源を用いることなく91%eeのアミノ酸誘導体の絶対不斉合成に成功した. 4.参考文献 (1) S. Hachiya, Y. Kasashima, F. Yagishita, T. Mino, H. Masu, M. Sakamoto, Asymmetric Transformation by Dynamic Crystallization of Achiral Succinimides. Chem. Commun., 2013, 49, 4776-4778. (2) F. Yagishita, N. Takagishi, H. Ishikawa,Y. Kasashima, T. Mino, M. Sakamoto, Deracemization of Quinolonecarboxamides by Dynamic Crystalline Salt Formation and Asymmetric Photoreaction by Using the Frozen Chirality, Eur. J. Org. Chem. 2014, 6366–6370. 1122015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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