千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 動的結晶化を伴う光学活性アミノ酸誘導体の絶対不斉合成法の開発 研究課題名(英文): Development of Absolute Asymmetric Synthesis of Amino Acids Using Dynamic Preferential Crystallization 研究者: ○笠嶋 義夫 千葉工業大学 KASASHIMA Yoshio 工学部 教育センター 教授 1.はじめに 自然界に存在するアミノ酸はL体であり,糖類はD体である。このような自然界のホモキラリティーはどのようにして発現し,広がったのかは未だに解明されていない大きな謎である. 自然界のホモキラリティーに限らず,光学活性化合物は医農薬や機能性材料の分野でも重要な機能を有している. それらを創出するために多くの努力が注ぎ込まれ,野依触媒を初めとしてすばらしい不斉触媒が開発されている。一般にアキラルな前駆体から光学的に純粋な化合物を創製するためには,出発原料や反応試薬触媒などどこかの過程で光学活性体を用いなければならない. ところが,我々は最近,アキラルな基質を溶液中で反応させるだけで,高い光学純度の光学活性化合物が得られてくる前例のない現象を見出した.(1), (2) この不斉発現増幅現象は,(1)アキラルな化合物の反応によりキラルな生成物が生じること,(2)生成した不斉中心のラセミ化と優先晶出(動的優先晶出)が同時に系内で起こることで達成できることを解明した. 前年度までに,コハク酸イミドのmeso体からdl体への異性化反応による不斉合成への適応を見出し報告した.1) この反応はアキラルな化合物から外的な不斉源を用いずに光学活性体を導く新しい絶対不斉合成法である.本研究期間内に,この手法による,アミノ酸誘導体等の絶対不斉合成の開発を目的とした. 2.研究の内容 アキラルな基質を出発原料とし,キラルな化合物の生成と動的優先晶出により,不斉の発現と増幅を実現し,付加価値の高い化合物群を創出するために,以下の反応について研究を行った. ・アロイルアクリル酸アミドへのアミンの共役付加反応と動的優先結晶化による光学活性アミノ酸誘導体の合成 容易に合成可能なアキラルなアロイルアクリル酸アミドにアミンを共役付加させてα-アミノ酸誘導体を合成する反応に関する不斉発現現象について検討した. 本手法を達成するためには,(1)アロイルアクリル酸誘導体1にアミンが効率良く共役付加し,ラセミ体のα-アミノ酸誘導体2を生成すること,(2)結晶化の条件で逆反応が進行して効率良くラセミ化が進行すること,(3)アミノ酸誘導体2がコングロメレート結晶を形成すること,の3つの条件が必須となる(図1). 図1.アロイルアクリル酸アミドへの共役付加反応と動的結晶化による光学活性アミノ酸の創製 1112015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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