千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2014/5/1 ~ 2015/3/31 研究概要(和文): Webを学習用素材とする学習支援システム構築に関する研究 研究者: 武田 善行 千葉工業大学 TAKEDA Yoshiyuki 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科 准教授 1.はじめに 本研究の目的は,Webを学習用素材とする自律的学習の支援を行うために,内容マイニングと行動マイニングに基づく学習過程管理法について研究することである.Web上のデータの増加に伴い,量と質の両面で,学習用素材の入手が容易になっている.しかしこれら学習用素材を有効活用するためには,個々の学習者が,適切な素材を選定し,学習計画を立案し,それをやり遂げるために進捗の管理をする必要がある.本研究では,個々の学習者に適した学習用素材を選定し,適切なタイミングで提供するための方法について研究する. 近年,Web上での学習用素材の提供が盛んに行われている.国際的に有名な大学がWeb上に講義を無償で公開し,Wikipediaのようにボランティアで知識の構造化が行われている.学習者同士を交流させ,特定の話題に関する学習用素材や情報の集積を目指すサイトも数多く存在している.Web利用者は膨大であり,様々な専門性を有する利用者が,その知識をWeb上に発信している.知識を得ようとする学習者にとって,これまで以上に学習機会が増え,高品質な学習用素材を利用できる状況になっている. 学習者にとって好ましい状況であるが,それでもまだ教材として用意される知識の量と,実際に利用されている知識の量には大きな隔たりがある.ある調査によるとネイティブの英語話者の語彙数は7万程度であるが,それに対し,市販されている非ネイティブ向けの英語教材の多くが,数千から,多くても1.5万程度の語彙習得を目指すものに限定されている.非ネイティブの学習者がネイティブと同様の語彙を身につけるための知識量のギャップは大きい. 一般的に,教材として用意されるものは,普遍性や利用頻度,学習意図等から精査されるため,知識の総量に比べて量が少ない.また教材として整理される場合,作業に時間やコストがかかるため,時事的な内容や新規性の高い情報を扱うことが難しい.Web上の膨大な資料を学習用素材の形に加工し,活用することができれば,ネイティブが通常の生活を通じて身につけたり,専門家が実務を通じて獲得したりする知識を効率的かつ網羅的に学習できると考える. しかしWeb上の膨大なデータを学習用素材として活用するためには,個々の学習者が自身の責任で適切な学習用素材を選定し,学習計画を立案し,それをやり遂げるために進捗の管理をしなければならない.学習者にとって,Web上の情報が自らの目的や学習時期に対して適切かどうかを判定することは難しく,その真贋さえも不明なことが多い.また知識が膨大であるが故に終わりが見えず,学習計画の立案や,進捗の管理をすることが難しい. これまで効果的な学習法として,検索練習に基づく方法や [1],精密化理論に基づく方法 [2]など様々な方法について報告がされている.本研究では,アクティブリコールによる方式を取り入れることで学習者の効果的な学習の遂行を目指した.アクティブリコールは,効率的な学習の原則としてよく知られている方式であり,学習過程において活発に記憶を促進する方式である.それとは逆に,単に読書をしたり,風景を眺めるような受動的な方式で学習することを,パッシブレビューと呼ぶ.例えば,単に教科書を読み上げることはパッシブレビューであるが,白色LEDを最初に発明した人は誰かという問いに答えることはアクティブリコールである.アクティブリコールは,長期間の記憶保持に繋がることが知られている.KarpickeとRoedigerは,大学生に対し,単語帳を用いて外国語を学習するタスクについて実証実験を行っている [3].その後も多くの研究者によって,これらの方式を活用した学習法が提案されている [4-8]. 2.研究の内容 本研究では,個々の学習者に適した学習用素材を選定し,適切なタイミングで提供するための方法について研究することを目的として次のことを行った. はじめに携帯端末で動作するフラッシュカード形式の学習用アプリケーションの構築を行った.システムが問題を提出し,ユーザがそれに対して回答できるか確認し,その上で答えを確認するという作業を繰り返し行うためのものである.アクティブリコール型の学習を行うことでより高い学習効果が得られるものと考える.また携帯端末上で動作するため,学習者が時と場所を選ばず,少ない時間の学1092015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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