千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
122/168

また、図3(b)から(c)のように、段差に前脚をかけた状態のロボットを前進させて、重心投影点を下の床面から上の段上へ遷移させることができる。これによって、(a)のように最初の脚を段上に引き上げること、また(d)のように最後に下の床に残った脚を引き上げることができる。 (a) (b) (c) (d) 図3 段差上り手順 4.前後脚幅の異なる構造 筆者らが提唱した歩行ロボットのエネルギー安定余裕の概念1)を用いると、前後の脚の接地点高さが大幅に異なる急傾斜地形では、後方(低地方向)に転倒させるエネルギーが小さくなる(後方に転倒しやすい)。とくに歩行中の後ろの支持脚が左右どちらか1本になる状況で、その脚が無い斜め方向に転倒しやすい。これを回避するため、後脚の着地点を中央よりにした方が有利である。つまり前脚が左右に幅広く接地し、後脚を左右接近させて中央寄りに接地させるのが有利である。そこで、前述の前後クロス脚構造において、前脚を外側に、後脚を内側に配置する設計とした。 これを実現するため、図4のようにU字型の胴体の中央部を後脚が突き抜ける構造とすることとした。シミュレーションおよび簡易な第0次試作機により、目標とする700mmの段差乗り越えを可能にする脚の節長、胴体の前後長などを設計した。 図4 メカナムホイール付で後脚幅が狭い構造(上面図) 5.第一次試作機の製作と実験 想定する実物大の第一次試作機を作成した。図5に外観を示す。脚寸法は第1節、第2節ともに約600mmである。試作機はU字型胴体に筋交いを入れてねじれ剛性を確保し、脚関節の支持間隔を広く取って横方向へのたわみを減らすなどの工夫をした。脚移動のみの実験において目標である700mmの段差に登ることができた。ただし、試作機は短期間で製作できるよう、アクチュエータには直動エアシリンダを用いて、空気を遮蔽することによる中間位置固定のみを行う制御法とした。また空圧バルブはすべて個別に手動操作した。このため、位置決め特性が悪く、段差を登るには5分ほどの長時間の試行が必要であった。 つづいて、図6のようにモータ駆動のメカナムホイールを各脚に2個ずつ装着した。平坦地における4脚接地状態(8輪駆動)で、全方向移動(旋回を含む)がスムーズにできることを確認した。また、脚運動と連動して1脚のみをホイールを回転させながら接地したままで前後させる動作も良好に行えた。段差昇降時にメカナムホイールを用いることで、脚のみより少ない歩数で進めることが期待されるが、その実験はまだ実施していない。 今後は、メカナムと脚を連動させた歩容を自動で行うよう、制御システムをつくる予定である。また、脚駆動のエアシリンダは臨時のものであり、これに代わるモータ駆動の直動アクチュエータを開発しており、第一次試作機のアクチュエータを換装する予定である。 図5 第一次試作機と700mmの段差(メカナム未装着) 図6 脚先のメカナムホイール 1) Kan Yoneda and Shigeo Hirose: Three Dimentional Stability Criterion of Integrated Locomotion and Manipulation, J. of Robotics and Mechatronics, vol.9, No.4, pp.267-274, 1997 1062015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です