千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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的研究資金の獲得を目指す。例えば、“音響情報を利用した構造物の安全性診断”、“安全で快適な音環境の創生”、“音響教育手法の開発”、“高齢者社会のための福祉音響学”、“3Dバーチャルコンサートホール”・・・などであり、音の情報性・文化性・福祉性・安全性・快適性・社会性に着目し、総合的に研究を進める。 結果として、科研・基盤研究A(研究課題:“公共空間の安全性確保を目指した可聴型音響設計システムの構築”、3か年)の採択に至ったので以下その概要を記す。 2.科研申請課題の内容 公共空間では、平常時の案内アナウンスなどの明瞭な音声情報伝達はもとより、非常災害時には、音声あるいはサイン音による警報・避難誘導情報の的確な伝達が必要である。しかしながら、実際には音響情報による伝達が困難となっているケースも少なくなく、東日本大震災の際には、一段とその重要性が認識された。このような問題を解決するためには、各種公共空間の音環境条件、拡声システムの特性・性能、音源信号となるアナウンスやサイン音の設計などに関する検討が必要である。それと同時に、情報の受け手である人の聴覚特性と視覚特性の相互作用に関する検討も必要である。そこで本研究では、様々な公共空間を対象として音響情報伝達システムの性能向上を目的とし、その具体的方法として可聴型音響設計システムを構築する。 街づくりや各種公共施設の設計において、防災や安全性が必須であることは言うまでもない。特に最近では、地震や異常気象などによる都市災害の危険性も増大しており、視覚情報と同時に音響情報による安全確保の手法の開発は喫緊の課題となっている。申請者のグループは、平成22-24年度にわたって「公共空間における安全確保のための音響情報伝達に関する研究」(基盤研究A)を実施した。この研究によって、平常時の各種情報の伝達だけでなく、緊急時の安全性を向上させるための音響情報伝達に関して、音響信号(音声・サイン音)、電気音響システム、各種空間における音響伝達特性などの要素課題について多くの基礎的知見を得た(国内研究発表:44件、国際研究発表:11件、査読論文:4件、特許出願中:1件)。本研究では、これらの過程で得られた知見を統合し、さらに推進させることによって、防災行政無線等の広域放送システム、鉄道駅や空港ターミナルビルなど各種の公共空間の計画・設計の際に、空間の形状、建築音響的条件、放送システム及び音響情報源の最適化設計等に関して、音環境の3次元シミュレーションが可能な手法、すなわち、下図に示すように、実際に耳で評価・確認しながら設計を進めるための可聴型音響設計システムを構築する。可聴型音響設計システムは、3次元音環境シミュレータと5つの要素研究で構成され、視覚情報も含めて実在あるいは計画・設計段階の公共空間の音環境を実験室内にシミュレートし、視聴覚の相互作用の影響も含めた音響伝達性能の評価が可能なシステムとする。3次元音環境シミュレータは、可視化・可聴化による体感評価結果を空間の音環境設計や音声・サイン音の作成にフィードバックし、十分な音響情報伝達性能を確保するための設計支援ツールとしての確立を目指す。体感評価結果は、シミュレータを構成する以下の(1)~(5)の各要素研究へもフィードバックされ、シミュレータと要素研究は相互に検討と改良が繰り返される。 本研究の特色は、都市空間における安全性確保のために、音声工学、聴覚生理・心理学、環境音響工学(建築音響、騒音制御)、電気音響・ディジタル信号処理工学などの音響関連諸分野を統合し、3次元音環境シミュレータによる体感評価を軸として各要素研究の連携を取ることにある。 図:可聴型音響設計システム(視覚情報の提示も含む) 22015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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