千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): オープンスクールの校舎を活かした学習環境づくりと教育実践 -子どもと環境との対話による学びの場- 研究者: ○橋本 都子 千葉工業大学 HASHIMOTO Kuniko 工学部 デザイン科学科 教授 1.はじめに 近年増加するオープンスクールの校舎は多様な学習環境づくりと教育の可能性を秘めている。本研究ではオープンスクールの校舎を活かした学習環境をつくり授業を実践することを目的に、千葉市立美浜打瀬小学校(以下M小)の教職員らと建築計画・音環境・教育方法の専門家らとの協働で行なった活動(表1)について、その結果生まれた“子どもと環境との対話と学びの場”について報告する。 2.教職員ワークショップ・校内研修会 M小の全教職員を対象に2年間で8回のワークショップや研修会を行い教職員が校舎特性に対する理解を深め、子どもの知的好奇心と学びを誘う学習環境づくりにつなげることを目指した。その結果、ワークスペースの可動家具の配置が工夫されて子どもの居場所がつくられ、季節を感じる掲示や単元の理解を深める展示の充実が図られた。 3.図工「ようこそ白の世界へ!」6年生(写真1) 様々な白い材料(紙や布、発泡スチロールやプラスチックなど)を用いて造形活動の楽しさを学ぶ単元である。普段は無機質な図工室を「ようこそ!」と友だちを招き入れるような、オープンスクールの校舎を活かしたダイナミックな「白の世界」が子どもたちによってつくりあげられた。 4.国語・算数「チョイスde学習」6年生(写真2) 多様な選択の機会がある学習である。決められた時間の中で子どもたちは自分に合った進め方や時間配分を考えて学習計画をつくり実行する。本を読む、映像資料をみる、パソコンで調べる、作図する、模型をつくる、計算するなど、1単位時間の授業で取り組む教科や課題は子どもによって異なる。課題の内容や活動に合わせて様々な学習コーナーをつくり、オープンスペースや余裕教室は「学びの場」としての機能を発揮する様子が確認された。 5.国語「響き空間での朗読」2年生(写真3) 音の響きを活用する学習を実施した。校内各所で詩を朗読して「響きの差を体感する授業」を行い、校舎内で最も音が響く階段室で「朗読表現を楽しむ授業」を行なった。子どもたちは響きを楽しみ、主体的に学習に取り組んだ。 6.社会「みはま自動車工場」5年生(写真4) 学習教材の掲示をすることで、普段はあまり使われていない廊下を「学びの場」に変えた実践例である。細長い廊下を“みはま自動車工場”として、部品から完成までの自動車生産ラインを掲示して、子どもの興味と理解を深めることを目指した。 7.結び ─教職員アンケート調査結果と今後に向けて─ 2013年度末にM小の全教職員(38名)を対象にアンケートを実施した(回収29名、76%)。その結果、「大学との協働による研修や授業実践を行なったこと」については96%(28名)の教職員が「やってよかった」と回答して、特に役に立った写真1子どもたちによってつくられる白の世界992015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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