千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): ワイドバンドギャップ・パワー半導体を用いた高速スイッチング電源の開発 研究課題名(英文): Development of high-speed switching power supply using wide bandgap power semiconductor 研究者: ◯佐藤 宣夫 千葉工業大学 SATOH Nobuo 工学部 電気電子情報工学科 教授 1.はじめに スイッチング電源回路の動作周波数の高周波化により,一周期当たりで扱うエネルギー量が減少し,インダクタやキャパシタの体積サイズを縮小できる(1).それに伴い電源自体の小型・軽量化(2)が図られ,電源回路における達成目標の1つとされている10 W/cm3が実現可能となる(3). 一方で,高周波動作下では,回路内の寄生インピーダンスの影響が顕在化する.つまり回路配線パターンやその構成素子の寄生成分に起因するサージ電圧やテール電流,それらのリンギング現象によりスイッチング損失が発生し,さらにその損失による発熱により素子の破壊を誘引するため,それらの抑制は対策すべき課題である. 本研究では,比較的小容量なDC-DCコンバータ回路(4)で用いられるバルブデバイスとして,高速スイッチング動作が可能と考えられるパワーMOSFET(電界効果トランジスタ)に着目する(5).特に,一般的な半導体材料であるシリコン(Si)製,また近年開発されているワイドバンドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)材料デバイス(6)に対して,それぞれ静特性ならびに動特性の評価を行う.具体的には,動作周波数を1 MHzとした高速スイッチング時における波形観測と損失の評価から,それらの比較検討を行った. 2.評価するパワーMOSFETについて SiC製パワーMOSFET(SCT2080KE)を評価対象の1つとした.これはDC-DCコンバータ,太陽光発電,誘導加熱,モータドライブ用途として,市販されているMOSFETである.絶対最大定格は,ドレイン-ソース間電圧: VDSS=1200 V,ドレイン電流: ID=35 A, IDP=80 A@pulse,チャネル温度: Tch=150℃である.またオン抵抗: RDS=80 mΩ,入力容量: Ciss=2080 pF,帰還容量: Crss=77 pF,出力容量: Coss=16 pFである.ここで出力容量だけが一般のSi製品のものより1桁以上小さいことに留意する.またスイッチング時間の指標となる上昇時間tr,ターンオン時間ton,下降時間tf,ターンオフ時間toffは,それぞれ35 ns, 36 ns, 22 ns, 76 nsである. 3. 実験手法 ここでは,パワーMOSFETの静特性ならびに動特性評価を行った際の実験装置・器具について述べる. <3.1> 静特性評価 半導体カーブトレーサ装置(CS-3300, 岩通計測社製)を用いる.装置仕様は,最大ピーク電圧3,000 V,最大ピーク電流1,000 Aを有する.本研究報告で評価するパワーMOSFETにおいて,特に耐電圧特性も十分に計測できる装置である. <3.2> 動特性評価 入力電源Vinを直流15 V(PMC35–2A, KIKUSUI社製),負荷抵抗Rを4.7 Ω(無誘導負荷) に設定することで想定出力を15Wとした. またゲート抵抗Rg は22 Ω であり,ソケットによりMOSFETを必要に応じて交換可能な仕様とした. ゲートの入力信号Vgにはファンクションジェネレータ(AFG3022, Tektronix社製) により周波数1 MHz, 振幅0-6 Vの矩形波を用いて, 高周波スイッチング動作を行った. また本報告の測定回路は, 各線路の寄生インダクタンス, 寄生キャパシタンスを極力低減して製作したものである. スイッチング特性の測定と評価のため, パワーMOSFETを1 MHzスイッチングした際のゲート電圧Vg, ゲート–ソース間電圧Vgs, ドレイン–ソース間電圧Vds, ドレイン電流Idをそれぞれ, 絶縁型オシロスコープ(TDS2024B,Tektronix 社製)を用いて観測している. 4. 結果と考察 図1に,各ゲート–ソース間電圧VgsのVds-Id特性を示す.閾値電圧以上ではドレイン電流が急激に上昇していることが確認される. 図1. SCT2080KEの静特性およびスイッチング軌跡 932015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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