千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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(3) 実験前後の学生へのアンケート調査 図1及び表1は,実験前後に学生に以下の5段階でアンケート調査を実施した結果である. 1.そう思う 2.ある程度そう思う 3.どちらとも言えない 4.あまりそう思わない 5.そう思わない 表内の数値は,(実験後の評価-実験前の評価)であり,値がマイナスになっているということは,実験前より実験後の方が,「そう思う」などの肯定的な方向にシフトしたことを意味する. 図1 実験前後の意識 放射線について、知識を有している。-0.8††放射線に対して、漠然とした怖さを感じる。0.33日々の生活において、放射線のリスクがあると感じる。0.328放射線のレベルはゼロにする必要がある。0.324†放射線は、管理することによりリスクの軽減が可能である。-0.14自分は、風評の影響を受けやすい。-0.26風評被害は、コミュニケーションにより改善が可能である。0.093†:5%有意;††:1%有意表1 実験前後の意識の差 (4) 結果の考察 この結果から,実験をすることにより,「放射線について,知識を有している」との認知が有意に増加したことがわかる.更に,身近なところに放射線が存在していることを実際の計測により確認することにより,自然放射線の存在についての認識が深まったと言える. しかしながら,実験の前後で,全ての項目において,有意な変化があったわけではない.以下,その理由について考察を行う. そもそも,実験を行った学生は,放射線について必ずしも知識を有していた者が多かったわけではない.母集団がそのような状況であったため,更に意識を深めるまでには十分至らなかった可能性はあり得る.実験の前に一定程度の放射線についての知識を伝えたつもりではあったが,もう少し放射線について自ら考える機会をより多く持つようにすることにより,意識レベルに明確な違いが出た可能性は否定できないと考える.なお,ここで言う意識の変化は,放射線が安全である,或は危険であると認識させるというような一方的なことではなく,それまで漠然と捉えていたものを,自ら考えることによって,方向性は様々であり得るが,一定程度しっかりした意識として認識されるようになることを意味する. (5) 今後の課題 今後の課題としては,事前の放射線についての知識の習得に当たり,グループ内でのディスカッションなどを更に深化させることにより,より深く,更に自分のこととして考えることを期待したい.併せて,結果を他者に対してわかりやすく伝えることを念頭に置いた結果の解釈をするよう促すことが必要と考える. また,放射線に関わる意識の変化を把握するための設問については,更なる検討の余地があるとともに,統計処理の仕方について一層改善を図る必要性があると考えられる. 3.まとめ 学部学生を対象に,放射線についての知識の習得及び放射線に関わる意識の向上を図ることを目的に,放射線計測を実際に行う各種の実験を実施した.実験の実施に当たっては,事前に結果について仮説を立てさせ,実際に実験を行い,その結果をグループ毎にまとめ,結果を発表させるという手順で実施した. 実験の前後に放射線についての意識等についてのアンケートを実施し,その結果を検証した.その結果によれば,実際に放射線を計測するという実験を行うことにより,放射線についての知識は高まったと言える.また,放射線に関わる意識についても,一部変化が見られた.ただし,放射線に対する意識については,設問の妥当性について検討の余地があるものの,全体として必ずしも系統的に大きな変化があったとは言えない. 今後,仮説を立てる際や結果の考察に当たり,グループ間でのディスカッションを一層深化させ,放射線についての知識の習得に加え,放射線に関わるリスクについて自らの考えを持ち得るようになるとともに,それを他者に対してきちんと伝えられるようになることを期待したい. 放射線に対する関心が,従来以上に高まっている中,実際に自分の手を動かし,自分の頭で考える経験を持つことにより,自分の考えを持つことが極めて重要であり,今後もこのような機会を提供していきたい. (参考資料)文部科学省委託放射線測定実践支援事業資料 882015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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