千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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調査するため,流量Qを0.1,0.5,1.0 mL/minと変化させてI-V試験を行った. ② 電極長さの影響 流れ方向への電極長さx(図3参照)が性能に及ぼす影響を調査するために,x=10 mm,20 mm,30 mmと変化させてI-V試験を行った. 3.実験結果及び考察 ①流量変化及び支持電解質の影響 図4は,流量によるI-V特性の変化を示したものである.この図から,Q=0.1,0.5,1.0 mL/minと流量を上げてゆくことで性能が向上しているが,違いは濃度損失に関係する高電流密度領域であることも読み取れる.この要因として,高流量になるほど燃料及び酸化剤濃度の流路入口から出口に向かっての減少が小さくなることが考えられる.比較のため,硫酸添加なしで流量がQ=1.0 mL/minの場合のデータも併せて示す.硫酸を添加しないと,電流密度が非常に小さくなることがわかる.硫酸の支持電解質としての働きで,溶液のイオン電導性が劇的に向上すると考えられる. ②酸化剤濃度の影響 図5は,流れ方向に対する電極長さxを変化させたときのI-V特性を比較したものである.この図から電極長さが短いほど電圧が高くなって高電流密度領域まで運転が可能となり,性能が向上している.これは,燃料および酸化剤が発電過程で入口から流れ方向に徐々に消費され,濃度が減少していくことが関係していると考えられる. 4.まとめ 本研究の結果から,燃料電池の発電性能に影響する条件として次のようなことがわかった. ① 支持電解質の添加によって性能が大きく向上するため,燃料及び酸化剤のイオン電導性をさらに高めれば大幅な性能向上が見込める.また高濃度の燃料及びに酸化剤を使用することで,濃度損失を低減し高い電流密度を得ることができると考えられる. ② 燃料と酸化剤の濃度が入り口から出口にかけて減少していくため,電極の長さが増えると損失が大きくなる.したがって,多数の短い流路で構成された燃料電池は高効率の発電を行える可能性がある. 参考文献 (1)R. Ferrigno, A.D. Stroock, T.D. Clark, M. Mayer, G.M. Whitesides, Membraneless vanadium redox fuel cell using laminar flow, Journal of the American Chemical Society, Vol. 124, No. 44, pp.12930-12931 (2002). (2)E. Kjeang, N. Djilali, D. Sinton, Microfluidic fuel cells: a review, Journal of Power Sources, Vol. 186, pp.353-369 (2009). (3)I. Sprague, P. Dutta, S. Ha, Flow rate effect on methanol electro-oxidation in a microfluidic laminar flow system, Journal of New Materials for Electrochemical Systems, Vol. 13, pp.305-313 (2010). 図3. 電極の長さx 図4. 流量によるI-V特性の変化 図5. 電極の長さxによるI-V特性の変化 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      83

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