千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 近年,人口の増大や産業の発展にともない,世界的にエネルギーの需要が急増している.その一方で現在の主なエネルギー資源である石油や石炭などの化石燃料は有限であり,近い将来枯渇すると言われている.また,化石燃料を利用することで発生する大気汚染や地球温暖化などが大きな問題となっている. これに代わる次世代の再生可能エネルギーとして燃料電池が注目されている.その中でも携帯電話やノートパソコンなどのモバイル機器用電源として,固体高分子形燃料電池(PFFC)と直接メタノール形燃料電池(DMFC)の研究開発が盛んに行われている.しかしながら,これらの燃料電池では電解質に膜を使用するために,運転条件によってはドライアウト(膜の乾燥によるイオン伝導性低下)やフラッディング(水分の凝縮よるガスの膜透過不良)を発生するという問題を抱えている. これらの問題を一挙に解決するものとして,層流の,拡散が弱いという性質を利用して,膜を使わずに燃料と酸化剤の区分化を行う層流燃料電池(LFFC)がFerrignoら(1)によって提案されている.本研究は,このLFFCを対象として,燃料流量と電極の長さが発電性能に及ぼす影響を調べたものである. 2.実験装置および方法 図1はLFFCの発電原理を示したものである.燃料と酸化剤を層流状態で流すことで区分化を行い,その界面でプロトンの伝達を行う.LFFCのアノードに供給する燃料は比較的選択の自由度が高い(2)といわれているが,本研究では取り扱いが容易な1 Mのメタノールを用いた.カソードに供給する酸化剤には0.01 Mの過酸化水素を用いた.さらに燃料と酸化剤の両方に支持電解質として硫酸を添加した(3).燃料にメタノールを使用して低温で反応させるために,アノード側電極にはPt/Ru触媒,カソード側電極にはPt触媒を用いた. 図2は実験システムを示したものである.シリンジポンプを用いてLFFC本体に一定流量の燃料と酸化剤を供給した.なお,燃料と酸化剤の流量は同一である.本体を通過した燃料と酸化剤の混合液は廃液タンクに排出した.電子負荷装置を用いて電池にかかる負荷抵抗を変化させ, I-V(電流-電圧)特性を測定した.測定にはデータロガーを用い,データはパソコンで処理した. 図1. LFFCの発電原理 図2. 実験システム図 LFFCの発電性能に影響するパラメータを調べるために,以下の実験を行った. ① 流量変化の影響 燃料及び酸化剤の流量が燃料電池性能に与える影響を研究項目: 科研費採択者助成金(最終年度) 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 層流燃料電池のマイクロ流路内反応性混相流の計測 研究課題名(英文): Measurements of Reactive Multi-Phase Flow in Micro Channel of Laminar Flow-Based Fuel Cell 研究者: 江尻 英治 千葉工業大学 EJIRI Eiji 工学部 機械サイエンス学科 教授 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      82

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