千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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た場合の半値角の周波数特性を示す.線状ループ素子の一辺は21.5mm,線径は0.2mmであり,ループ素子の共振周波数は3.3GHzとなっている.帯状ループ素子の幅は27.5mmでループ素子の幅は5mm,ワイヤグリッドモデルで用いている線の直径は0.2mmであり,帯状ループ素子の共振周波数は約4.4GHzと検討周波数は共振周波数より低くなっている.一般にFSRの素子は共振周波数で設計する.しかしFSR付ダイポールアンテナでは,線状ループ素子の共振周波数3.3GHzではFSRに大きな電流が流れ, FSRからの放射によってビーム幅が狭くなる.またサイドローブが大きくなることも確認しており,共振周波数での設計は適切ではないことがわかる.線状ループFSR素子の場合,周波数がループ素子の共振周波数から大きくなるにつれてセクタ指向性に近づくが,半値角は本検討の周波数範囲(3.4-3.8GHz)で約20度と大きく変動する. 一方,帯状ループ素子を用いた場合,検討周波数範囲でセクタ指向性を実現でき,半値角の変動は7度程度に抑えることができることが確認できる.図1のダイポール素子からy軸方向に50mm離れた位置に850MHzのダイポール素子を配置したときの放射特性の真円度は±1.5dB程度であることを確認しており,上記のアンテナ構成が850MHz帯の指向性に影響しない[R2]. 2.2 テーパ形状FSRによる半値角制御 図3に正方形線状ループ素子を3×3個 yz平面に配置したFSRにおいて,y軸方向において中心のループ素子に対して両端のループ素子の大きさを変化させたときの指向性の検討を行った.ここでダイポール素子は幅10mm,長さ29.2mmの帯状素子を用い,FSRは線径0.2mmφの正方形ループ素子でダイポールアンテナから15.4mm離して配置している.中心のループ素子の一辺の長さは23mm,ループ素子の間隔は7mmである.検討周波数は3.5GHzである. 図4にテーパファクタ(lb/lm)に対する半値角の特性を示す.図4よりlbを変えることによって半値角を約70度から100度まで自由に設定できることがわかる.またlbを大きくしても小さくしても半値角は上昇し,lbが0.935lmの時に半値角が最小になることが確認できる. lmlblbループ素子ダイポール素子ループ素子ダイポール素子23mm23xTF mm23xTF mmx.xyzy.z 図3 テーパを有するFSRのアンテナモデル 3.まとめ 本報告では周波数共用FSR反射板付ダイポールアンテナにおけるFSR素子の設計指針と広帯域化の検討を行った.その結果 FSRを構成する素子形状は,対象とする周波数で共振する素子で設計するとFSRからの反射により放射特性が歪むために,対象周波数からずれた周波数で設計する必要があることを示した.またループ素子を帯状とすることにより,広帯域特性が実現できることが確認した. さらに半値角の制御を,FSRの両端のループ素子の大きさを変えることにより実現できることを明らかにした. 本研究に関する主な発表論文 [R1] K. Cho, “Bandwidth Enlargement of Dipole Antenna with FSR by Using Metal Strip Loop Elements”, Proc. of IEEE 2nd Asia-Pacific Conference on Antennas and Propagation, pp.39-40, 2013. [R2] 長敬三,“ループ素子で構成した周波数選択性反射板付ダイポールアンテナ”,信学技報,AP2013-70, pp.45-49, 2013. [R3] 工藤翔平,長敬三,“両端のループ素子の大きさを変えたFSR付ダイポールアンテナによる半値角制御”,信学ソ全大,B-1-118, 2013. 参考文献 [1] 総務省,第4世代移動通信システムに関する公開ヒアリング,資料1 第4世代移動通信システムについて, 2014.1.23 (http://www.soumu.go.jp/main_content/ 000270523.pdf) [2] 長敬三他,“次世代移動通信システム実現に向けた基地局・端末アンテナ技術”,信学論B, Vol.J91-B, No.9 pp.886-900, 2013. [3] B. A. Munk, Frequency Selective Surfaces, Theory and Design, John Wiley & Sons, Inc., 2000. [4] 長敬三,井原泰介,“FSS反射板を有する反射板付きマルチバンドダイポールアンテナ”,2012信学ソ大,B-1-83. [5] http://www.qsl.net/4nec2/ 0.70.80.911.11.260708090100110120130Taper factor半値角(度)3.5GHz 図4 テーパファクタに対する半値角(xy面) 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      70

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