千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 移動通信システムの更なる高速・大容量化に対応するため,近年,3.5GHz帯など従来の移動通信の周波数帯よりも高い周波数帯の利用が注目されている[1].移動通信用基地局アンテナはビルの上などに設置されているが,ビルには多くのアンテナを設置するための強度がないこと,景観の問題などから,基地局には複数の周波数帯を共用可能なアンテナが用いられている[2]. 移動通信用基地局アンテナ素子として広く用いられている反射板付きダイポールアンテナの放射特性は,ダイポール素子と反射板の電気的な間隔が大きく影響する.複数の周波数帯を共用する反射板付きダイポールアンテナでは,周波数ごとに反射板とダイポール素子の間隔が適切になるようにダイポール素子を配置すると,高い周波数帯のダイポール素子は低い周波数帯のダイポール素子と反射板に挟まれた構造となる.この場合,高い周波数帯のダイポール素子から放射された波が,低い周波数帯のダイポール素子上に誘起されて不要放射を生じ,指向性が歪むという問題がある. 周波数選択板(Frequency Selective Reflector:FSR)は特定の周波数で反射特性を有し,それ以外の周波数帯で電気的に透明にみえる特長を有する[3].筆者はこのFSRを高周波数帯の反射板付ダイポールアンテナの反射板に利 図1 解析モデル(帯状ループFSRの構成)[R2] 用することで,共用アンテナ内で高周波数帯用アンテナの配置自由度を改善し,共用する周波数帯でのアンテナ性能を向上する構成を提案している[4]. 本報告では文献[R1],[R2]および[R3]で報告した結果について述べたものである.FSRを用いた反射板付ダイポールアンテナの広帯域化を行う手法として,帯状ループ素子で構成したFSRの効果について検討を行った結果について述べる[R1][R2].また,中心と両端の大きさを変えたループ素子でFSRを構成することにより,半値角を制御できることを示す[R3]. 2.研究の内容 2.1 帯状ループFSR素子による広帯域化の効果 本研究では周波数帯域を3.4~3.8GHzとし,FSR付ダイポールアンテナにおいてセクタ指向性が得られる周波数特性を検討する.解析にはモーメント法(4NEC2)を用いた[5].図1に本解析に用いたアンテナ構成を示す.ダイポール素子には帯状ダイポールを用い,図に示すようにワイヤグリッドにより近似している.FSRは線状および帯状正方形ループ素子の2つの場合について検討し,縦横9×3個配置した構成としている.ダイポール素子とFSRの間隔は15.4mm,ループ素子の間隔は1mmとした. 図2に,FSRに線状素子を用いた場合と帯状素子を用い 33.23.43.63.845060708090100110120帯状ループFSR線状ループFSR半値角[deg]周波数[GHz] 図2 半値角の周波数特性 研究項目: 科研費採択者助成金(初年度) 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 周波数選択性反射板を用いた移動通信基地局用周波数共用アンテナの研究 研究課題名(英文): Study on Multi-band Base Station Antenna Comprising Frequency Selective Reflector for Mobile Communication Systems 研究者: 長 敬三 千葉工業大学 CHO Keizo 工学部 電気電子情報工学科 教授 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      69

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