千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 冬季に屋外で行う集中授業「スノースポーツ」では,雪山の気象条件が授業内容や学生の学習意欲に影響を及ぼすと考えられ,授業満足度を維持するために気象条件に応じた授業プログラムの改変が必要とされる.本研究では,スノースポーツ受講学生の温熱的快適性および学習自己評価向上を目的として,授業時の気象観測および各授業局面における温冷感調査を行い,気象条件による授業内容への制限や授業改善策を検討した. 2.研究の内容 (1) 方法 本学の春季集中授業「スノースポーツ」受講学生96名(平成24,25年度合計)および引率教員10名を対象に調査を行った.平成24年2月6日の午後,7日の午前,午後,8日の午前,平成25年2月10日の午後,11日の午前,午後,12日の午前の計8回の授業を対象とした. 各班(2年度合計10班,スキーおよびスノーボード)の引率教員に小型温湿度気圧データロガー(TR-73U,T&D)を装着させ,班毎の環境条件を測定した. 各回の授業直後に授業実施内容および時間配分と授業時間内の気象条件への対応について記録した.引率教員の授業記録に基づき,実習内容と時間配分について局面分析を行い,マネジメント(準備,準備運動,リフト乗車,リフト待ち等),学習指導(教員からの説明,模範,待機),認知学習(質疑応答,学生同士の教え合い),運動学習(滑走,滑走以外の運動,移動,スケーティング等)の時間配分を調査した. 受講学生の各授業局面における温冷感(-4非常に寒い,-3寒い,-2涼しい,-1やや涼しい,0どちらとも言えない,+1やや暖かい,+2暖かい,+3暑い,+4非常に暑い),主観的運動強度(ボルグスケール),学習自己評価(学習意欲,楽しさ,協力,集中力,パフォーマンス,課題発見の各項目について,4段階評価)を各回の授業直後に質問紙調査した.本研究で用いた授業記録用紙,主観評価用紙および質問項目の詳細は,2013年度千葉工業大学FDフォーラム予稿集を参照. (2) 結果 実習期間中に各班で測定した気温は平成24年度1日目が-0.2~3.0℃(曇り),2日目が4.6~7.2℃(晴天),3日目が-4.5~-3.6℃(吹雪),平成25年度1日目が-2.3~-0.2℃(曇り,一部ナイター),2日目が-1.6~2.8℃(晴天,一時曇り),3日目が2.7~4.4℃(晴天)と天候による幅が見られた.各回の授業中に班毎に測定した気温と受講学生の平均的な温冷感の関係を図1に示した.受講学生の温冷感は天候に左右された. -3-2-10123-6-4-20246810←寒い温冷感暑い→気温(℃) 図1 各授業中に班毎に測定した気温と受講学生の平均的な温冷感(各授業局面を平均)の関係(各ポイントは各回の授業の各班の学生の平均値を示す) 各年度の最も気温の低かった実習日について,各授業局面における温冷感を図2に示した.リフト乗車時には学生の温冷感が一貫して「寒い」申告であった.また,滑走や他の運動を含む運動学習局面での「暖かい」申告に対して,教員からの説明時は若干寒い傾向にあった(図2). 各班の引率教員の授業記録に基づく授業局面分析の結果,実習初期には,教員からの学習指導が多い傾向にあるが,後半には学生同士の教え合いや運動学習局面の増加が見られた.また,リフト乗車やスノーボードブーツの装着などのマネジメント局面が多いことはスノースポーツの研究項目: 教育研究助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): スノースポーツ実習中の環境測定と温冷感調査による受講学生の学習自己評価向上への取り組み 研究課題名(英文): Measuring atmospheric condition and thermal sensation in a snow sports class to improve students’ self-evaluation of learning 研究者: 若林 斉 千葉工業大学 WAKABAYASHI Hitoshi 工学部 教育センター 助教 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      67

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