千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
68/148

1.はじめに 本研究では,学習意欲維持を目的とした学習方法の提案とそれを支援するクラウドシステムの構築を目的とする.修得までに長い期間がかかるような種類の学習では,学習意欲や学習環境を維持することが難しい.特に,学習時間のペース配分が難しく,モチベーションの高い期間は長い学習時間を確保できるが,低い期間は学習時間が確保しづらく,最終的には,学習を途中で投げ出してしまうことになることが多い. 行動履歴に基づき学習者に最適な学習量の配分を行い,学習の円滑な遂行を支援するための意思決定法について研究する.具体的には,学習行動履歴を取得・保存し,学習効果の測定を行う.意欲の低い学習者でも学習を継続しやすい環境を整備するために,携帯情報端末とクラウドシステムを連携させた学習および行動履歴収集システムの開発を行う. 2.研究の内容 (1) クラウドシステムの構築 学習者の行動履歴を保存し,スケジューリングを行うためのデータ管理を行うため,図1のようなクラウドシステムの構築を行う. 学習素材の取得取り組み状況,回答状況をアップロード携帯端末を用いた学習 図1 学習状況収集システム また,学習が長期間に及ぶ場合,指導者が学習者に対して対面指導をすることが難しく,学習者の自主的な取り組みの量や質が習熟度を決める割合が多くなる.そのため学習効果を高めるには,自主的な学習を支援するための仕組み作りが重要となる.本研究では,効果的な学習過程を明らかにし,学習者がどのような状況にあるかを逐次把握するために,学習過程をモニタリングするためのシステムを構築する. ユーザ側の環境として,主に携帯端末を用いた学習を行うことを想定し,Androidオペレーティングシステム2.3以上の条件で環境を構築する.また,クラウドホスティングサービスとしてGoogle社のサービスを活用する. ユーザは,学習に先駆けて,クラウドサーバから素材を取得する.学習用素材を用いて学習を行う際に,学習時間や,学習した内容などを記憶し,クラウドサーバ上にアップロードすることで学習状況の調査や分析が行える環境を構築する. (2) 学習方法の検討 これまで効果的な学習法として,検索練習に基づく方法や[2],精密化理論に基づく方法[3]など様々な方法が提案されている.本稿では,アクティブリコールによる方式と,分散学習による方式を取り入れることで学習者の効果的な学習の遂行を目指した. アクティブリコールは,効率的な学習の原則としてよく知られている方式であり,学習過程において活発に記憶を促進する方式である.それとは逆に,単に読書したり,風景を眺めるような受動的な方式で学習することを,パッシブレビューと呼ぶ.例えば,単に教科書を読み上げることはパッシブレビューであるが,白色LEDを最初に発明した人は誰かという問いに答えることはアクティブリコールである.アクティブリコールは,長期間の記憶保持に繋がることが知られている.KarpickeとRoedigerは,大学生に対し,単語帳を用いて外国語の学習するタスクで実証実験を行っている[3].その後も多数の研究者によって,これらの方式を活用した学習法が提案されている[4-8]. 分散学習とは,時間間隔を置いて学習する方式である.それとは逆に,時間間隔を置かずに学習する事を集中学習と呼ぶ.一般的には,分散学習の法が効率的であると言わ研究項目: 教育研究助成金 研究期間: 2013/6/1 ~ 2014/3/31 研究概要(和文): 学習意欲維持を目的とした学習支援システム構築に関する研究 研究者: 武田 善行 千葉工業大学 TAKEDA Yoshiyuki 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科 准教授 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      56

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です