千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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とし、把持の順番は各グループの判断に委ねた。 図1 鉛筆モデル (工作センターにて作製) ⑤人間工学の視点による問題の指摘と解決 人間工学チェックリストを活用して、大学構内の施設、案内表示、近隣施設(駅・商業施設)等を対象とする観察で問題点を指摘し、グループとしての対策の提案(KJ法を含む)まで行う。グループワークの成果は、報告書を提出するとともに第14・15週の発表会で口頭により報告する。各種機器(車いす等)を貸し出す等の相談には応じたが、グループ討議には教員・TAとも基本的には参加しなかった。1グループの人数は6~7名を上限とした。 3.研究の成果 職場等の改善手法の一つに『参加型改善手法』がある。 この手法は、人間工学に関する知識が少ない作業者が職場の小集団活動を通じて問題点を指摘し、改善対策の提案と実行を行ううえで有用なものとされている。また、この手法の特徴は、改善活動の参加者が共通した問題意識を有していることにある。 今回、『人間工学演習1』では、学生が問題意識を共有していない状態から参加型評価手法を採り入れた授業展開を行った。テーマごとに提出課題を提示したが、個人が提出するものだけでなくグループで提出するものも設定した。 それらを通して得られた成果の概略を紹介する。 まず、『①個人の計測結果と工業製品(既製品)との関連の把握』では、指示に従って自分の手のサイズを計測し、グループの集計表としてまとめることから始めた。計測については、JISに定められた方法の説明を行ったが、それとは異なる道具(タコ糸と直定規)を提供し、グループ内で相互に計測する雰囲気を醸成し協同が重要であることをあらためて認識させた。 『②設計提案』では、学生が持ち寄った“製品”それぞれについて、主観的な評価を行わせ、自分の手になじむ大きさを再認識させた。なお、この過程で①と②の考え方の違いを把握し指摘できた学生が多くみられた。 『③人間工学的計測の体験』では、受講者を2グループに分割して行ったが、両グループともに客観的に計測することの重要性を認識させることができた。なお、『④感覚評価(片手鍋)』については、計測の体験と合わせて、異なる説明方法により行ったが、習得状況の観察結果については別の機会に報告したい。 これまでの成果に基づいて、製品化に至る過程を体験できる教材として、図1のような鉛筆モデルを10セット作製し、『④感覚評価(筆記具)』の対象教材として使用した。筆記具についてはこれまでにも多くの研究報告があるが、“太さ・握りやすさ”に関して比較・評価過程を体験できる教材は少ない。今回、“握りやすさ”を筋電図により評価することを試みたが、この点については方法に関してさらに検証する必要があることもあきらかになった。今後も、客観的な計測項目による評価を積極的に授業の中に採り入れていきたい。 『⑤人間工学の視点による問題の指摘と解決』は、人間工学系の科目がある全国の大学の授業・研究や社会人を対象としたセミナーで必ず行われる項目でもある。テーマ(対象と内容)を学生等が自ら選定すべきではあるが、教員が示した“テーマの例”に沿って決まることが多いのは他大学でも同様の傾向のようである。本学学生には、『人間工学演習1』と並行して開講されている『ユニバーサルデザイン』で習得した知識が反映されていたようで、ほとんどのグループが福祉関連の体験装具を使用して具体的な問題点の指摘と対策の提案が行われていた。 4.おわりに 平成25年度の『人間工学演習1』の最終合格率は90%を超えている。前年度の演習と内容が異なっているため、単純に比較することは避けるべきと考えるが、成績保留となった学生のほとんどが課題を提出して、最終的に合格したという特徴もある。その一方で、協同作業ができない学生も散見されたが、例年よりは減少した印象であった。 『人間工学演習1』は、受講者数(150名)に対する計測機器台数(2台)の不足という深刻な問題を有しているが、参加型評価手法を採り入れた授業展開は、心理計測や感覚評価(官能評価)をともなうテーマにおいては、学生の積極的参加を促す方法として有用であることをあらためて確認することができた。 今後、生理的な計測項目への展開についてさらに検討を重ねてみたい。 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      55

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