千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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よび周辺の生物観察・採集を行った. さらに,人が入ることによる底質の撹拌すなわち耕耘に着目し,足踏み・スコップによる撹拌を取り上げ,それぞれの方法を定義した上で一定回数毎に,底質のベーンせん断強度,底質表面から20㎝深度までの上中下層のORPを測定した. 表1 構造要素を活用した簡易構造 図2 菊田川における各構造の設置状況 4.調査結果 簡易構造設置後,10月2日,16日,26日に台風22号,26号,28号が関東地方に接近し,調査地点も降雨,出水の影響を受けた.調査は継続中であるが,現在までの主要な結果は以下のとおりである. (1)汚泥の堆積量および安定性 各構造設置後1カ月は泥の堆積が見られなかったが,10月初旬以降の台風による降雨,暗渠からの河川内への出水によって,底質置換部,浸透マス内には顕著な泥の堆積が見られるようになった.ただし,置換底質のうち比重の軽い竹炭が流出しており,平常時の流量が少ない小河川でも,底質の安定について配慮が必要である.対策としては,粘性の高い現地泥との混合が有効であることが確認された. また,飛石は現地盤に対し凸型の構造となるため,流れによる乱れ等の効果により上部にはほとんど泥が堆積していない.生物の付着等にとっては好ましい条件であるが,軟泥上および砂置換した構造上では数cmの沈下が確認されており,沈下による埋没防止が課題である.浸透マスについては,根入れ30cmとしたことから本体が流出することはなく構造は安定であった. (2)水供給と浸透速度 浸透マス内に残留した水の水位低下量を把握することで,平均的な浸透速度を知ることができる.図3は,各構造における浸透速度の経時変化を示したものである.10月18日の設置直後においては,浸透速度に差は見られないが,その後底質の違いによる差が生じ始める.3度の台風を受けた各構造では,砂置換での目詰まりが顕著である.泥が堆積する場所での粗粒化策では,目詰まり対策として簡易な手段で時々大きな水位差を与えるなど,間隙を洗浄するような工夫も必要と考えられる. 00.0010.0020.0030.0040.0050.0069月19日10月18日11月1日11月13日2月3日浸透速度(cm/s)調査日砂竹炭+泥混合礫 図3 底質置換材別の浸透速度の経時変化 (3)底質の改善 台風により新たな泥が堆積したことによって酸化状態になったものの3カ月程度で還元状態へと戻るとともに,泥の内部の還元化が進むなど,水供給の効果は自然状態の変化に対し非常に小さい.一方,耕耘による底質の改善効果は顕著であり,足踏み100回程度で表層から20cm厚さの底質の混合,均一化が認められた.河川に人が入いれるような状況になれば,耕耘も有効な対策になることが確認された. 5.おわりに 本プロジェクトにより,周辺実験としての底質環境改善の試みの場が設置された.4.で得られた様々な結果を実験講義内で提供することで,ビオトープの構造要素を工夫した環境改善に対する分析や考察を進めることが可能と考えられる. 本研究に関する主な発表論文 (1) 木村仁志・五明美智男:各種構造を用いた臨海部河川環境改善手法の研究,土木学会関東支部技術研究発表会,長岡大学(2014.3) (2) 鈴木拓弥・五明美智男:住民活動の耕耘効果とSIモデル提案に関する研究,土木学会関東支部技術研究発表会,長岡大学(2014.3) 参考文献 1) 五明美智男他:環境系学生のフィールド調査力向上底質置換 安定化 水供給 飛石 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      50

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