千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 生命環境科学科環境システムコースでは,地域規模から地球規模に至る複雑かつ多様な環境問題に対して適切な分析・評価と解決策を提案できる人材の育成をめざし,自然環境(大気圏・水圏・地圏)と社会環境(生態圏・社会圏・生活圏)により構成した環境システムに関する研究・教育活動を進めている.カリキュラムで用意されている学生実験は,実験や調査の基礎力と実践力を養うために重要であり,実験室,キャンパス内あるいはキャンパス周辺にて多様な内容で提供されているところである. 本プロジェクトでは,社会圏分野における戦略的な展開として,昨年度の教育研究助成成果である「フィールド調査能力向上のためのキャンパス実験」(以下,前報)1)に続き、「フィールド分析・考察能力向上のためのキャンパス周辺実験」を実施した.生物生息場改善やビオトープ造成,各種環境対策などのPDCAで必要となる分析・考察能力を磨くことを目的としたもので,地域環境の中で理解とコミュニケーションを深めながら,地域の環境問題の解決策を工夫改善していく取り組みである. カリキュラムとしては,前報のキャンパス内実験を実施するとともに,本報により開始されたキャンパス周辺実験での結果や効果に対する考察,問題点の把握,新たな改善策の検討などを議論する枠組みとした. 2.地域環境の理解 本学新習志野キャンパスに隣接して流れる菊田川下流域を本プロジェクトのフィールドとした(図1).調査地点の西側には,ラムサール条約に指定されている谷津干潟が存在する. 調査地点のある習志野市は,高度成長と都市化により,人口・世帯数の増加,耕地面積の減少,商業施設・交通の機関の増加とともに,高中層マンションや多くの団地が形成されてきた.また,国の高度経済成長政策としての「京葉工業地域造成計画」によって開発が進められ,1966年の第一次埋立工事,1977年の第二次埋め立て工事により,袖ヶ浦区ならびに芝園・秋津・茜浜地区が形成された.人口の増加,雨水・家庭排水の増加による水質の悪化,埋立の進行に伴って,菊田川の一部暗渠化と幹線水道の整備が進められた.本報における調査地点は,第一次埋立と第二次埋立の境界に位置し,合流管方式により降雨時に雨水と下水が放流される暗渠の出口があり,汚泥の堆積と悪臭が生じる場所となっている. 谷津干潟菊田川茜浜調査地点 図1 調査地点 3.底質改善策の検討および調査内容 前報では,杉山2)が提案したビオトープの物理的構造要素のわかりやすさに着目し,環境を観察する指標としてビオトープ構造要素の関連図を作成し,環境系の学生が身近な環境に興味を持ち観察し評価するための指標として適用した.本報では,こうした構造要素の組み合せによって.学生の理解しやすい底質改善の構造を検討することとした.具体的には,粒状型(底質置換),凸型・扁平型(置換底質の安定),凹凸型(潮位変動を利用した底質への水供給)の組み合わせにより,12種類の簡易構造を2013年8月,10月に設置した(表1,図2).各構造について,一定期間ごとに,水の浸透速度,構造近傍底質の酸化還元電位(以下,ORP),構造の沈下量,置換材の流出量の測定お研究項目: 教育研究助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 環境系学生のフィールド分析・考察能力向上のためのキャンパス周辺実験 研究課題名(英文): A Systematic Approach to Off-Campus Experiment for Advancement of Analytical Ability in Field Survey 研究者:(○;研究代表者) ○五明 美智男 千葉工業大学 矢内 栄二 千葉工業大学 GOMYO Michio 工学部 生命環境科学科 教授 YAUCHI Eiji 工学部 生命環境科学科 教授 村上 和仁 千葉工業大学 矢沢 勇樹 千葉工業大学 MURAKAMI Kazuhito 工学部 生命環境科学科 教授 YAZAWA Yuuki 工学部 生命環境科学科 准教授 小田 僚子 千葉工業大学 ODA Ryoko 工学部 生命環境科学科 助教 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      49

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