千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
60/148

する光のコリメート(平行光への整形)も、同様の光学系により可能である。 (3)放物面ミラーによる結像 曲率を有するミラーの機能はレンズとほぼ同様である。本教育研究では2枚の軸外し放物面鏡を使用し、ミラーに結像の原理を取り上げた。図3に示す光学系により、点光源からの光を再び点光源に戻す方法を学ぶ。放物面鏡は3軸ステージおよびミラーホルダーに設置されており、位置およびあおりを調整可能である。小型豆電球からの球面波に近い状態で放射される光を、2つの放物面鏡により結像する系となっている。 図3 放物面鏡による結像. (4)平行ミラーによる光路調整 コリメートされたレーザー光を取り回す際に、2枚の平行ミラーを使用すると、任意の経路を作り出すことが可能である。光学実験において多くの場面に登場する基本的なレーザー光路調整法である。図4に示すように、任意の経路を通るレーザー光に対し、2枚の平行ミラーを調整することで光路を変化させ、2つのピンホールを通す作業となる。2枚の平行ミラーはミラーホルダーに設置されており、2軸での角度調整が可能である。 図4 平行ミラーによる光路調整. 3.幾何光学実験キット 以上の内容を踏まえ、(1) 単一凸レンズにおける結像 複数の凸レンズによる結像の理解 (2)複数のレンズによる像の拡大縮小法の習得 (3) レーザー光のコリメート法の習得 (4)レーザー光の拡大縮小法の習得 (5)複数のミラーによるビーム経路調整法の習得 (6)放物面鏡による集光およびコリメート法の習得、これら6項目の実験が可能なセットを同一ブレッドボード上に構築した。構築した実験系の写真を図5に示す。光源には安価なダイオードレーザーを使用した。 本実験キットにより、ゼミナール1受講の3年生9名に対し一連の調整を実施した。特に光学素子の取扱いに不慣 図5 幾何光学学習実験キットの外観. れな状態では、項目(5)複数のミラーによるビーム経路調整法の習得、および(6)放物面鏡による集光およびコリメート法の習得の部分に時間を要した。呑み込みの早い学生であれば、それぞれ20分程度で調整法を身に着けることができたが、1時間程の時間をようする学生もいた。いずれにせよ、どの学生も実際に光学系を手に触れて調整することで、光の取り回しの理解が深まったと言える。 4.まとめ レンズおよびミラーを使った、幾何光学習熟のための実験キットの開発を行い、当該装置を用いてゼミナール1受講の3年生に一連の幾何光学実験を実施した。卒業研究では、パルスエネルギー100 mJ以上の高強度パルスレーザーや、波長1064 nmもしくは1550 nm である視認のできない赤外光レーザーを使用して同様の調整を行うことになる。使用上に最新の注意を要するClass2以上のレーザー光を扱う前に、Class1レベルの安全な可視光レーザーで光の取扱いに習熟することは、安全の面からも非常に重要である。また、幾何光学に関する技術は、座学だけでは身につけがたい。光の制御に関する実体験に基づいた知識習得を促せたと考えられる。 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      48

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です