千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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れている.また,Mannich反応は,逆反応による平衡反応が存在し,生成物のラセミ化が同時に進行する.アキラルなイミンとケトンを出発原料とし,生じた生成物3の動的結晶化によるアミノ酸合成を検討した. MeRO+RO2CNR'RO2CR'HNRORO2CR'HNRObaseoracidbaseoracidアキラル(S)-3(R)-3動的結晶化(S)-3(R)-3コングロメレート結晶コングロメレート結晶見かけ上のラセミ化鏡像異性体の片側だけに偏って結晶化 図2.Mannich反応と動的結晶化による 光学活性アミノ酸の創製 種々の置換基を有するイミンとケトンからラセミ体の3を合成した.HPLC によりラセミ体の3を分割し,DBU存在下でのラセミ化を確認することができた.得られた単結晶のX線結晶構造解析により,結晶配列と結晶空間群を調査したところ,いずれの結晶もラセミ結晶であった.しかし,コングロメレートが見いだせれば,触媒量の塩基存在下での逆反応によるラセミ化が効率よく進行することより,効率の良いアミノ酸の絶対不斉合成が可能となることを明らかにすることができた. (3)アキラルなエノンへの共役不可反応と動的結晶化による光学活性β-アミノ酸誘導体の絶対不斉合成 アキラルなアクリル酸誘導体4にアミンを共役付加させることでβ-アミノ酸誘導体5が生成する.この反応も可逆反応であり,新たに生成した不斉中心は,逆反応による見かけのラセミ化が進行する. まず環状エノンであるインデノン6への共役付加を検討した.3種類のインデノンを合成し,種々の1級または2級のアミンを共役付加させて,β-アミノインダノン7を得た.複数の7について単結晶のX線結晶構造解析により,結晶中の分子配列と空間群を調査した.5つの化合物の結晶構造は,互いの鏡像異性体が相互に配列して螺旋を形成している様子が明らかとなった.この系でもコングロメレート結晶が見出されれば,β-アミノケトンやβ-アミノ酸の絶対不斉合成が可能となる大きな知見を得ることができた. 図3.アキラルなエノンへの共役付加反応と 動的結晶化による光学活性β-アミノ酸 およびβ-アミノケトンの創製 ラセミ体が結晶化する際には,10~20%の確率でコングロメレートを与えることが知られている.また,含窒素カルボニル化合物は,特に高い割合でコングロメレートを形成する.したがって,本研究でも必ず複数の基質でコングロメレート結晶が見つかると確信している. 3.まとめ 有機結晶の特異性を活用することで,アキラルな化合物を原料とし,不斉中心を生成する反応と動的結晶化により,アミノ酸の絶対不斉合成が可能となる反応を開発することができた.アロイルアクリル酸誘導体へのアミンの共役付加反応やMannich反応からは,α-アミノ酸が合成でき,エノンへのアミンの共役付加ではβ-アミノ酸やβ-アミノケトンの不斉合成に展開することが可能となった. 4.参考文献 (1) S. Hachiya, Y. Kasashima, F. Yagishita, T. Mino, H. Masu, M. Sakamoto, Asymmetric Transformation by Dynamic Crystallization of Achiral Succinimides. Chem. Commun., 2013, 49, 4776-4778. (2) F. Yagishita, K. Okamoto, K. Kamataki, S. Kanno, T. Mino, Y. Kasashima, M. Sakamoto, Chiral Symmetry Breaking of Axially Chiral Nicotinamide by Crystallization from the Melt. Chem. Lett., 2013, 42, 1508-1510. 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      38

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