千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 高速情報通信技術を基盤とした多様で高度なサービスが迅速に提供可能となっている.しかし,実際のユーザ利用率はまだ低く,設備の有効利用がなされていないのが現状である.そのため,どのような新サービスを,どのエリアを対象に,どの程度投資したらよいかがサービス提供母体(企業や自治体等)にとって課題となっている.これを解決するためには,効率的にサービスを普及する方法を明らかにしていく必要がある.本年度は,ICTインフラを用いたサービスを普及させるために,タブレット端末を対象に,ユーザの関心をどのように捉えるか,およびサービス開始から数年たち普及が浸透している高速無線通信インフラサービスのWiMAXを対象にしたサービス普及のモデル化の2つの観点から検討を実施した. 2.研究の内容 FTTH(Fiber-To-The-Home)やLTE(Long-Term Evolution)などの高速情報通信インフラを有効利用するためには,そのインフラ上で利用されるサービスの普及が不可欠である.このサービスを普及させるためには,図1に示すとおり「販促活動」と「サービス最適化」の2つの活動が必要となる.販促活動は,広告,値引きキャンペーン,記念グッズの提供などを含んでおり,設備投資費は不要だが消費者への影響を適切に把握しておく必要がある.一方,サービス最適化は,付加価値サービスの提供,操作性の改善,提供エリアの拡大などを含んでおり,設備投資を必要とし,消費者の要求を把握しておく必要がある.販促活動では,もともとサービスを享受したいと考えていた潜在顧客が,早めに契約する効果があるが,新規顧客を開拓するのは困難である.一方,サービス最適化では,新規顧客を取り込む可能性が大きい.そのため,ユーザが何に関心を持っているか,また顧客獲得機会を逃さないように,どのようにインフラ設備を敷設したらよいかが重要となる. この2つの活動を効率的に運用していくためには,これまでのサービスに対して,ユーザがどの程度満足しているのか,またその満足度を向上させるためには,どのような改善が必要なのか,いわゆる顧客満足度と顧客要求を連携させ、的確に把握していく必要がある. 図1.サービス普及の枠組み 1)ユーザ満足度の把握 近年スマホやタブレットが台頭しており,移動性とともにタッチパネルによる操作性や視認性の向上がなされ、ユーザにとってモバイル端末の選択肢が増加している.特にタブレットは,スマホに比べての操作の容易性や見易さから高齢者,またPCよりも起動の容易さからビジネス対応への期待が高まっている.これからの社会におけるライフスタイルの充実及びICTインフラの展開にはモバイル端末の充実が重要となり,タブレットの普及はその鍵となると考えられる.タブレットは,単なる端末ではなく,ネットワークとつながり様々なサービスを提供する.そのため,タブレットを普及させるためには,単に端末の性能をあげるだけでなく,端末メーカ,通信事業者,アプリ提供者等が連携した総合的な取り組みが必要となる. 本研究では,既利用者の満足度や不満を考察し,それらの人が潜在需要となる未利用者へ影響を与え,さらなる普及を促すようにするため,継続利用に向けての重要項目を抽出していく手法を確立していく. 表1に示すアンケートによる2012年の不満の上位3項目を取り上げると,“タブレットのサイズと重さ”,“バッテリーの持ち”,“片手での操作”である.しかし,2年間の変化研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): ユーザ行動を基本としたICTインフラ整備およびサービス普及の研究 研究課題名(英文): The methodology of ICT infrastructure evolution and its service diffusion based on user behavior 研究者: 岩下 基 千葉工業大学 IWASHITA Motoi 社会システム科学部 経営情報科学科 教授 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      29

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