千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 近年,人間とコミュニケーションを図り,その活動を支援することができる人間共生システムの開発が進められている.そのようなシステムの実現には,対象となる人間やその周囲環境の状態を適切に認識し,その人間に対して適切なサービスを提供できることが必要となる. システム側からユーザへ情報を伝達する際,一般にはディスプレイ機器等を通して行う事が多い.しかし,情報を確実に伝達したり,特定の個人にのみ提示したりするためには,システム側がユーザの状態を認識し,確実に伝達できる位置へ能動的に情報を提示できることが望ましい.そこで先行研究(1)では,小型レーザプロジェクタ及びPC 制御可能なパン・チルト雲台を組み合わせ,ユーザの頭部姿勢推定手法(2)を応用することにより,常にユーザの視界内に情報を提示できるシステムを実現した. しかし,先行研究のシステムでは情報提示場所が常にユーザの視界の中心付近に限定されていた.したがって,ユーザがその付近の環境に注目して作業を行っている場合や,物が置かれるなどしてその環境が平坦ではない場合など,状況によっては投影先として必ずしも適切ではない場所へ情報投影してしまう可能性があった. そこで本研究課題では,これらの問題を解決するシステムの実現を目指し,次の2項目について研究を行う. A. 視界内における任意の場所への投影位置変更 図1 のように,投影提示された情報をユーザのタッチ動作で視界内の任意の位置に移動させ,以降はその視界内での相対的な位置関係を保って情報提示できるシステムを実現する. 図1 投影位置変更の概念図 B. 適切な投影場所の自律的な選択 RGB-Dカメラを利用して投影場所の状態を確認し,適切な投影場所を自律的に選択して情報を投影提示できるシステムを実現する.具体的には,凹凸のある場所は情報投影としては好ましくなく,可能な限り平坦な場所が望ましい.そこで,投影場所に凹凸が多い場合には,システムはその周辺で平坦な場所を自律的に探索・選択し,そこへ情報投影する. 図2 投影位置選択の例 2.提案システム 提案システムの構成を図3に示す.ユーザが机の前に着席し,情報は机上に投影される状況を想定する. 図3 情報投影システムの構成 ユーザの前方上部に小型レーザプロジェクタを搭載したパン・チルト雲台を設置する.これにより机上の任意の位置に情報を投影することが可能である.また,同じくユーザの前方上部,及び前方机上にRGB-Dカメラを一台ずつ設置する.上部のカメラはユーザの手の動き及び投影先の状態を,机上のカメラはユーザの頭部を観測する. 処理の流れは次の通りである. A. 画像・深度データの取得 2台のRGB-Dカメラからそれぞれの画像及び深度データを取得する.取得したデータはそれぞれユーザ頭部姿勢推定処理,タッチ動作の認識処理及び投影先の状態確認に使用する. B. ユーザ頭部姿勢推定 A.で得た机上カメラからの画像・深度データをもとに,研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): ユーザの視界内の適切な場所に情報提示可能なインタラクティブ情報投影システム 研究課題名(英文): Interactive Projection System which Shows Information at Appropriate Positions within User’s View 研究者: 今井 順一 千葉工業大学 IMAI Jun-ichi 情報科学部 情報工学科 准教授 投影情報 ユーザの視界 タッチして画像を移動平坦な場所の方が 投影場所として適切凹凸が多く情報が読み取りにくい RGB-Dカメラ雲台 プロジェクタ2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      27

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