千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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い,ピッチ・ロール軸周りの安定性を検証する.また,アゲハチョウのパラメータとして,はばたき周波数10Hz,初期迎え角0°,腹振り角-15deg~15deg,質量450mg,腹部質量180mg(全体の40%),翼長55mm,前進翼角16deg,翅厚0.3mmを採用した.また,計算領域は130cm*100cm*100cm,FEMの要素数は約80万点,時間刻みは,構造計算が0.001ms,FEMが0.01msである. 3.ピッチ・ロール軸周りの安定性 図2に,初速度0m/sから開始し,17回のはばたきにおけるピッチ・ロール姿勢の推移を示す.ここで,実線はCase A, 破線はCase Bを,また,ピッチ角を太線で,ロール角を実線で,フラッピング角を細線で示している.Case Bのピッチ角の振動には,二つの周波数成分があることが分かる.ひとつは,Case A同様のはばたき周波数に一致した小さな振幅の振動で10Hzであり,位相が,はばたき運動に対して約90°進んでいる.これは,翅の打ち下ろしでピッチ角を増加させながら上昇し,翅の打ち上げでピッチ角を減少させながら前進するという蝶型の飛翔を特徴づけている基本的な振動である.もうひとつは,1.5Hz程度のゆっくりとした振幅の大きな振動である.後者の振動は,Case Aにおいては,見られない.Case Aの方がピッチ角を下げようとするモーメントは大きいが,後ろ重心の機体を前方の推進力で上方向に牽引しているので,ピッチ角90°近傍で収束している.また,ロール角は,10回目のはばたきを超えるあたりからCase Bにおいて不安定になり,振動を始めているが,Case Aではほとんど変化せず,安定であった. 図3に胸部の軌跡(x-z平面)を示す.Case A, Bともに,2回目のはばたき以降若干落下し,ピッチ姿勢を約90°まで起こして上昇し始めている.Case Bでは,10回目のはばたき以降,ロール角を振動させながらも上昇を続けている.本パラメータにおいては,どちらも17回のはばたきにおいては落下せず,飛び続けた. 以上のメカニズムを明らかにするため,左右翼面の圧力を積分し翅周りの渦挙動を解析する必要があるが,紙面の都合上割愛する. -20-1001020-80-70-60-50-40-30-20-1001020z [mm]x [mm]Case BCase A Fig.3 Thorax trajectories for Cases A and B 4.まとめ 翅まわりに発生する渦によって,受動的にピッチ・ロール姿勢を安定化する蝶型はばたきロボットを開発することを目的とし,翅のフラッピング運動の中心角を変更した数値シミュレーションを実施した.左右の翅の対称な運動によっても,ピッチ・ロール姿勢の受動的な安定性を作り出せる可能性を示した.蝶型はばたき飛翔における縦・横安定性の実機による証明が今後の課題である. 本研究に関する主な発表論文 (1) Masahiro SHINDO, Taro FUJIKAWA, and Koki KIKUCHI, Analysis of Roll Rotation Mechanism of a Butterfly for Development of a Small Flapping Robot, JSDE, The 3rd International Conference on Design Engineering and Science: ICDES2014, (2014), (to appear). 参考文献 (1) R. B. Srygley and A. L. R. Thomas, Unconventional lift-generating mechanism in free-flying butterflies, Nature, Vol.420, No.12, (2002). (2) T. Fujikawa and K. Kikuchi et al., Development of a small flapping robot: Motion analysis during takeoff by numerical simulation and experiment, MSSP, ELSEVIER, Vol.22, Issue 6, pp.1304-1315, (2008). -90-60-300306090120150180010020030040050060070080090010001100120013001400150016001700Angles [deg]t [ms]Case A: flapping angleCase A: attack angleCase A: roll angleCase B: flapping angleCase B:attack angleCase B: roll angle Fig. 2 Transition of flapping, pitch, and roll angles for Cases A and B 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      26

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