千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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Fig. 1 Examples of designated drugs in this research 1.はじめに 脱法ドラッグ(脱法ハーブ)は「合法ハーブ」「お香」「アロマ」として専門店やアダルトショップ、自動販売機、インターネットで売られている。使用すると意識を失ったり、状況判断ができなくなるおそれもあり、事故や犯罪につながる危険があるため、社会治安の維持の観点から、早急な管理体制が望まれる。警視庁によると、脱法ドラッグの吸引などに絡んだ事件は昨年、23件確認されている。危険運転致傷容疑などで19人が逮捕され、事故に巻き込まれ1人が死亡、34人が重軽傷を負っている1)。これらの多くは意図的に脱法ドラッグを摂取した可能性が高いが、一方で脱法ドラッグを含むクリーナーや芳香剤等が販売されているケースもあり、場合によっては非意図的に使用されている可能性も考えられる。その結果、我々が予想する以上の使用量の脱法ハーブが使用されている可能性も考えられるが、これら化学物質使用の地理的分布特性や利用時刻特性などは全く不明となっており、市民の購入や使用管理は決して十分ではない状況である。したがって、使用された違法ドラッグやそれらの代謝産物が水環境中へ人用医薬品類等のように排出されている可能性は否定できず、水環境中への違法ドラッグの排出特性の把握や水環境中への混入防止のための早期警戒モニタリングシステムの構築は検討に値すると考えられる。特に、下水処理水の混入率の高い河川水を飲料水源とする都市では脱法ドラッグの水環境中への排出特性の把握はヒト健康の保全の観点から重要性が高いと考えられる。さらに、都市域における水の再利用の安全性の観点からも重要であろう。しかし、これら薬物の水環境中挙動の把握に必要な情報、つまり指定薬物の使用量や使用地域特性、頻度特性、親物質や代謝物質の下水への排出量、下水処理場や浄化槽を介した河川への流入量等、水環境への流入特性情報は全く不明となっている。しかし、これらに関する精度の高い情報を効率的に収集する分析評価方法は見受けられない。 そこで、本研究では河川水や下水中の指定薬物の包括的モニタリングシステム及び早期警戒モニタリングシステムのプロトタイプとして、パッシブサンプラーを用いた水中指定薬物の分析、評価手法の確立を目指している。 2.実験方法 【対象物質】 Table 1に乱用薬物の種類と人体への作用及び国内の規制法律について整理した。この表から多種多様な乱用薬物が関連法律で規制されていることが明らかであるが、一方で未規制の薬物も多種多様に存在する。そのため、逐次、新たな指定物質が追加されており、特に平成25年3月に合成カンナビノイドの包括指定は有名である。合成カンナビノイドは欧米ではSPICEと称され、製品や尿、血液サンプルを中心にLC/MSもしくは誘導体化を施したGC/MS分析で測定され研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 薬物代謝産物を指標としたパッシブサンプラーによる水中カンナビノイド類指定薬物のモニタリング手法及び都市域における利用特性評価方法の確立 研究課題名(英文): Establishment of monitoring method for cannabinoids-like designated drugs using their metabolites as indicators by passive samplers and evaluation method for their usage in urban areas 研究者: 亀田 豊 千葉工業大学 KAMEDA Yutaka 工学部建築都市環境学科 助教 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      23

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