千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 近年,分子生物学やゲノム科学の急速な進展によって,生体分子や分子間のネットワークについての知見が増加していく中,生命の部品を組み合わせて生命現象を再現・設計する構成論的アプローチを行う研究分野(合成生物学;synthetic biology)が注目されている.その一つとして,立体構造既知の構造ユニットを組み合わせて,新しい人工のRNP(RNA-タンパク質複合体)分子を構築する研究は,RNPアーキテクチャ(RNP 建築学)とよばれている.本研究では,SRP RNAのS-domainのthree way junctionの立体構造とハンマーヘッド型リボザイムの立体構造が類似していることに着目し,これらを組み合わせた新規機能性RNA(SRzyme RNA)の作成することを目的とした(図1). SRP RNAは,タンパク質に分泌に関わるシグナル認識粒子(Signal Recognition Particle; SRP)のRNA成分である.SRPは,分泌タンパク質がリボソームで生合成される際に,そのタンパク質の分泌シグナルを認識し,細胞膜に誘導する働きを担っている.また,SRP RNAのS-domainは2つのヘアピン構造を持ち,SRP19タンパク質とSRP54タンパク質が結合することが明らかとなっている.さらに,SRP19タンパク質がS–domainのHelix 6とHelix 8のループ部分に結合することによって,SRP RNAの立体構造変化が起こり,SRP54タンパク質がS-domainに結合しやすくなることが知られている.従って,SRP19はSRP RNAの立体構造変化を誘導する分子スイッチの働きをしている. ハンマーヘッド型リボザイムはMg²⁺存在下でGUC配列の3’側を特異的に切断するRNA切断酵素である.その切断活性には,リボザイムの活性部位の特徴的な立体構造が重要であることが知られている.そこで本研究では,2つのRNAを組み合わせたSRzyme RNAをデザインし,SRP19タンパク質を作用させることによって,その切断活性を制御することを計画している.また,本研究では,超好熱性古細菌由来のSRP19タンパク質を用いることにより,安定な分子スイッチを作成できると考えている. 研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): SRP19タンパク質とRNAによる分子デバイスの開発 研究者: 坂本 泰一 千葉工業大学 SAKAMOTO Taiichi 工学部 生命環境科学科 准教授 図1 SRzymeのデザイン 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      15

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