千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 現在,パワーデバイスは,ほぼ100% Siを用いて製造されている.一方で,Siパワーデバイスの性能向上が限界に近いとされ,ワイドギャップ半導体であるSiCおよびGaNを用いたパワーデバイスが注目されている.パワーデバイス用Si,GaNおよびSiC結晶の評価を実施した. 2.実験方法 パワーデバイス用Si結晶の評価には,ボロンを高濃度にドープしたSi基板上に5μmのn型エピタキシャル層を形成したウエハを使用した.エッチングによりウエハ表面に抜けている転位を顕在化し,エッチピット部をFIB加工しTEMにより詳細に評価した.明視野観察法と暗視野観察法から反射ベクトルを判別し,バーガースベクトルと反射ベクトルの関係から転位線との角度を求め,転位線の方向を決定した. 評価に用いたGaN on Siウエハは,A社製の直径2インチウエハと直径6インチウエハを切り出したものとB社製ウエハの直径2インチウエハを切り出したものである.ラマン分光評価には光源波長532 nm のレーザーを用いウエハ面内分布を測定した.ラマンスペクトルとしては568 cm-1 で現れるGaNのピーク近傍を評価した. SiC結晶の評価には,4度オフの窒素ドープ4H-SiC基板ウエハを用いた.透過X線トポグラフィおよびフォトルミネッセンスで観察した.波長420nmのフォトルミネッセンスでは検出できるが,X線トポグラフィでは検出できない領域をFIBで加工し,TEMで評価した. SiC-SBDの順方向および逆方向電流-電圧特性を測定した後,KOHエッチング処理により結晶欠陥を顕在化した.KOHエッチング処理は財団法人ファインセラミックスセンター殿に委託した.その後,光学顕微鏡を用いてSiC-SBDのデバイス領域内の結晶欠陥を分類し,電気特性との対応をとった.今回の実験では,電流密度が1E-6 A/cm2となる順方向電圧をスレッシュホールド電圧Vth,電流密度が1E-6 A/cm2となる逆方向電圧をブレークダウン電圧VBとした.貫通転位の個数とVthおよびVBとの関係を詳細に調べた. 3.結果および考察 3.1 パワーデバイス用Si結晶の評価 TEMによる測定結果を図1に示す.薄膜化後の暗視野TEM観察によりバーガースベクトル,バーガースベクトルと転位線との角度を決定した.a,b及びcそれぞれの転位ごとに分類した結果を表1に示す.aの表面に抜けている転位は90度転位である.b及びcはエピタキシャル層と基板の界面に沿って伸展している転位であり,ともに60度転位である.界面に伸展しているbとcは互いに直交している. 図1 TEMによるSi測定結果 表1 転位の分類 転位転位線の方向バーガースベクトル(b)転位線とbの角度a[0-1-1]a/2[0-11]90度b[1-10]a/2[0-1-1]60度c[-1-10]a/2[0-11]60度 3.2 パワーデバイス用GaN結晶の評価 図2は,A社製ウエハのラマンスペクトルであり,ウエハ面内での分布を示したものである.ウエハ上部で圧縮応力を,下部で引張応力の分布を確認した.2種類のピークの差は約0.8 cm-1 であり,応力分布はウエハ製造過程に起因するものと考えられる.B社製ウエハのラマンスペクトルではGaNのスペクトルにサブピークが見られた.ピーク分離を行った結果を図3に示す.576 cm-1に見られるサブピークは緩和層に起因すると考えられる. 研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): パワー半導体デバイス用結晶品質向上 研究課題名(英文): Improvement of Crystal Performance on Power Devices 研究者: 山本 秀和 千葉工業大学 YAMAMOTO Hidekazu 工学部 電気電子情報工学科 教授 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      9

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