千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1. はじめに 2007年にMIT(Massachusetts Institute of Technology)の研究チームが中距離における無線電力伝送に関する理論を発表し,その翌年,同チームが実際に 2 m 先の60 W 電球を光らせることに成功した[1]。このとき使われた無線電力伝送技術は,磁界共振結合方式や磁界共鳴方式と呼ばれ,それまで研究が進められていた電磁誘導方式に比べ,伝送距離や位置自由度の点で優れており,携帯機器や電気自動車用充電装置などへの応用が期待される[2]。磁界共振結合方式の原理は,文献[1]において,結合モード理論を用いた説明がなされている。しかし,この技術が実際の製品に広く活用されるためには,取り扱いが容易な,集中定数による説明が望まれる。そこで本研究では,主に集中定数を用いた等価回路によって,磁界共振結合方式の無線電力伝送システムの出力電力と効率が予測可能であることを確認する。さらに,実際にコイルを自作し,磁界共振結合方式の無線電力伝送システムを構築した実験結果と集中定数を用いた等価回路との計算結果を比較して,磁気共鳴方式を用いた3D移動物体無線給電に関する基礎研究を行う。 2.研究の内容 (1) 磁気共鳴方式の集中定数を用いた等価回路による理論計算 本研究では,等価回路から算出される入出力電力の値と 実験による入出力電力の測定結果を比較し,両者の差から 等価回路の有効性を評価する。共振回路を用いた磁界結合 型の無線電力伝送システムの全体像を図 1 に,集中定数に よって等価回路化したものを図 2 に示す。 図1に示すように本システムでは,合計で4個のコイルを用いている。電源側に誘導コイルと共振コイルを各1個,負荷側にも共振コイルと誘導コイルを各1個有し,共振コイルには共振用コンデンサを直列接続している。 図 1 共振回路を用いた磁界結合型無線電力伝送システム 送電側 共振回路 受電側 図 2 集中定数による等価回路 図2に示した集中定数による等価回路では,電源の内部抵抗とコイル1Lの抵抗成分を合計して1rとし,その他コイルの抵抗成分は,それぞれ2r~4rとした。さらに,コイル同士の相互誘導係数を,12M~34Mとして表した。図2からキルヒホッフの法則を用いて回路方程式を立て,行列形式で書けば式(1)となる。 研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2013/11/29 研究課題名(和文): 3次元移動物体に対する磁気共鳴方式を用いた無線給電に関する基礎研究 研究課題名(英文): Study on Wireless Power Transmission for 3D Moving Object using Magnetic Resonance 研究者: 相知 政司 千葉工業大学 OHCHI Masashi 工学部 電気電子情報工学科 教授 電源側誘導コイル1L 電源側共振コイル2L 負荷側共振コイル3L 負荷側誘導コイル4L 共振用 コンデンサ ,V 抵抗負荷 (1))()/1()/1(00043214434241434333231323232221214131211    IIIILLjRrMjMjMjMjCLjrMjMjMjMjCLjrMjMjMjMjLjrVLLin2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      7

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