千葉工業大学　プロジェクト研究年報　2014年版

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比較のため, 破線はK凝縮を伴わないハイペロン物質についての結果, 点線はK凝縮とハイペロン混在を伴わない中性子星物質についての結果を表す. ハイペロンΛの出現後, ρB = 0.68 fm-3でK凝縮が基底状態として発現する.(Y+K)相中では, Y 混在とK凝縮の両方によるエネルギー利得の効果で, 系のEOS の軟化が顕著になる. また以前, バリオンに対する非相対論の枠組で示されたように[1],ρB = 1.0 fm-3で密度異性体としての準安定状態ができ,その結果, 重力に依らない自己束縛した状態の存在が示唆される. しかしこのEOS では, 特に高密度領域での硬さが足りず, 観測にかかっているような重い中性子星を得ることができない. 高密度領域でEOS を堅くするような効果が必要である. ４．まとめと課題 高密度物質中に(Y+K)相のようなストレンジネス自由度が発現するという理論上の必然と観測事実との整合性を明らかにすることが焦眉の課題として挙げられる. 具体的には, Λ(1405) ,およびカイラル摂動的な取り扱いでK中間子運動量についての高次効果であるrange effect を取り入れ, EOS のUK依存性を抑制する可能性を考えることや, 高密度での斥力効果を得るため, バリオン間の多体力の現象論的導入などが挙げられる. 後者についてはユニバーサル３体力による斥力効果を(Y+K)相へ導入することが考えられる. また, B-B相互作用について, 多体問題の理論的枠組をこれまでの相対論的平均場理論 (Hartree 近似) からHartree-Fock 法に拡張し, バリオンに由来する反対称化 (Fock) 効果が EOS を堅くする可能性を検討する. 更に,K中間子交換型 B-B相互作用において, K凝縮相の存在下で K 中間子ダイナミクスがどのように変化し,B-B間斥力にどのような影響をもたらすかを検討する. ハドロン物質中およびクォーク物質中でのK凝縮相の相平衡・連続性の観点からは, クォーク物質相での K凝縮への移行を取り入れたEOS の性質を検討する.その結果を踏まえ, ハドロン相とクォーク相をつなぐクロスオーバー領域のEOS の役割を(Y+K)相で検討することが考えられる. 本研究に関する主な口頭発表,発表論文 (1) T.Muto,T.Maruyama and T.Tatsumi,”Coexistence of Antikaons and Hyperons in Nuclei and in Neutron Stars”,JPS Conference Proceedings Vol.1, 10.7566/JPSCP.1.013081(2014). (2) 武藤 巧, 丸山 敏毅, 巽 敏隆, “ K中間子凝縮-ハイペロン共存相と中性子星観測との整合性”, 物理学会秋季大会(高知大学朝倉キャンパス,９月20-23日, 2013). (3) T.Muto,T.Maruyama and T.Tatsumi,”Interplay of antikaons with hyperons in nuclei and in neutron stars”,EPJ Web of Conferences,2014 to be published. (4) T. Muto,”EOS of high-density matter with kaons and hyperons”,HPCI滞在型研究会:Nuclear equation of state with strangeness (理化学研究所和光本所,11月11-15日, 2013). (5) 武藤 巧, 丸山 敏毅, 巽 敏隆,“高密度物質中でのK中間子凝縮-ハイペロン共存相に対するバリオン間斥力効果”, 物理学会第69回年次大会（東海大学湘南キャンパス, 3月27-30日, 2014）. (6) T.Tatsumi and T.Muto,“ Quark beta decay in the inhomogeneous chiral phase and cooling of compact stars”,Phys.Rev.D89, 103005 (2014) 参考文献 [1] T. Muto, Phys. Rev. C77, 015810 (2008); Nucl. Phys. A804(2008), 322. [2] P.B.Demorest et al.,Nature 467,108(2010). [3]T. Muto, T. Maruyama and T. Tatsumi, Phys. Rev. C79, 035207(2009). [4] T. Muto, T. Maruyama and T. Tatsumi,”Coexistence of bound antikaons and hyperons in finite nuclei”, International Workshop on Strangeness Nuclear Physics(SNP12)(Aug.27-29,Neyagawa,Osaka,Japan), 「原子核研究」Vol.57, pp.230-236,(2013). 図1 (Y+K)相における１バリオンあたりのエネルギーのバリオン密度 ρ B 依存性（実線）. UK = -120 MeVの場合を示す. UK= -120 MeV ε / ρB (MeV) 2014　千葉工業大学附属総合研究所　プロジェクト研究年報　　　　　　　　　　Project Report of Research Institute of C.I.T 2014　　　　　　118

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