千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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不安定さが示された. Stress selected型マイクロコズムでは実験開始後,分解者であるバクテリアが増殖し,生産者の藻類,その後捕食者としてアメーバの増殖が順に確認されたが,ワムシは確認されなかった.培養開始時に15属18種のプランクトンが観察されたが14日目にはプランクトンは選定され,代表的な種としてDesmodesmus quadricauda,Chlorella sp.が100%のフラスコで,Nitzschia sp.が80%のフラスコで,Monoraphidium contortum、Cyclotella stelligera、が60%のフラスコ内で観察された.30日目には,Monoraphidium contortum,Desmodesmus quadricauda,Scenedesmus sp.,Chlorella sp.が100%のフラスコで生存,Nitzschia sp. が80%のフラスコで確認された.これらの5種はStress selected型マイクロコズムの生態系において競争に強い種であることが示された. Gnotobiotic型であるN typeマイクロコズムは3種の微細藻類(Chlorella sp.,Scenedesmus sp.,Tolypothrix sp.),4種の微小動物(Cyclidium glaucoma,Lepadella sp.,Philodina sp.,Aeolosoma hemprichi),4種の細菌類(Bacillus cereus,Pseudomonas putida,Acinetobacter sp., Coryneform bacteria)から構成され,14日目以降個体数は安定し,一定の個体数を維持して共存し,高い安定性と再現性が示された. (2)機能パラメーター(P/R 比)による比較 生態機能面であるP/R比の経日変化に着目すると,Naturally derived型マイクロコズムは早い段階でP/R比=1となり安定系に近い結果となったことから生産と呼吸のリズムができていることが確認された. Stress selected型マイクロコズムにおいてはNaturally derived型マイクロコズムよりもフラスコ内のP/R比が安定となるのに時間が必要であることが示された.また,フラスコごとに呼吸量に大きな差があることが確認された. Gnotobiotic型マイクロコズムのP/R比は,自然生態系と同様に1に収束後,安定して推移した.またStress selected型と異なりフラスコごとの呼吸量に大きな差がみられず,再現性の高さを裏付ける結果となった. 4.まとめ システムとして生態系全体に及ぼす影響を評価するためには,マイクロコズム内が安定している状態が望ましい.生物相とP/R 比(光合成による生産/呼吸量の比)の評価結果から,各タイプのマイクロコズムのP/R比は安定系である1に収束するが,Stress selected 型マイクロコズムは環境水を接種後,不安定な状態が続くことが示された.また,Naturally derived 型マイクロコズムも生産者,捕食者,分解者は確認できるが,各フラスコで系が安定しない結果となった.以上から,Gnotobiotic 型のN type マイクロコズムは,Stress selected型マイクロコズム, 図2 マイクロコズムにおける外観の経日変化 表1 各種マイクロコズムの比較評価結果 Naturally derived 型マイクロコズムよりも生産者,捕食者,分解者が安定的(恒常的)に確認でき,各フラスコ間で生物相と呼吸量がともに一致する高い安定性と再現性が示され,移入種問題や汚染物質を対象とした生態系機能に着目した環境影響評価を行う上でのツールとして有効であると考えられた. 本研究に関する主な発表論文 (1) 呂 志江,賀数邦彦,杉浦則夫,稲森隆平,徐 開欽,村上和仁,稲森悠平:大型水生動植物生態系モデルによる界面活性剤の生態環境リスク影響評価,日本水処理生物学会誌,49巻,1号,pp.21-30 (2013.3) (2) K.Murakami, M.Gomyo, S.Agatsuma, Y.Amano, A.Inoue-Kohama:Environmental Condition Index for Estimation on Eutrophic State of Enclosed Aquifer Ecosystem, International Journal of GEOMATE, Dec, 2013, Vol. 5, No. 2 (Sl. No. 10), pp. 706-711, Geotec., Const. Mat. & Env., ISSN:2186-2982(P), 2186-2990(O), Japan (2013.12.) 参考文献 (1) 村上和仁,林 秀明(2011)標準モデルとしての各種マイクロコズムにおける安定系構築可能性の比較解析、環境情報科学論文集,25巻,pp.221-226 (2) 栗原 康(1998)共生の生態学,岩波書店 (3) 栗原 康(1985)有限の生態学,岩波書店 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      112

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