千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1. はじめに 風力発電は,太陽光発電とともに今後の発展が期待される重要な再生可能エネルギーのひとつと位置づけられている.現在,風力発電に用いられている風車は,主にプロペラによる大出力の水平軸風車であり,すでに日本各地のウィンドファームなどで多数が稼働している.一方で,垂直軸風車は風向依存性がないため,日本のような風向変化の激しい地域にむしろ適しているといえる.またその中でジャイロミル型風車は,小出力であるものの騒音が少なく,鳥などの小動物の巻き込みが少ないため,都市部での発電装置として実用化が期待されている. しかしながら,ジャイロミル型風車は,水平軸風車と比較して研究開発の歴史が浅く使用実績も少ないため(1),まだまだ効率が低く,普及を図るためには今後発電効率の一層の向上が不可欠である.従来のジャイロミル型風車に関する実験的研究では,翼型として対称翼を用い,翼枚数は2~5枚としているものが多く,また効率に関しては垂直軸風車の中では高い傾向にあることがわかっている.本研究では,ジャイロミル型風車の重要な設計パラメータである羽根車の翼の取付け角に着目し,効率との関係を調査した.加えて翼端板による性能向上の可能性についての調査を行った. 2. 実験装置及び実験方法 本研究で使用した風車羽根車の概略形状を図1に示す.羽根車の軸長はL=300mm,直径はD=330mmとした.翼枚数は2,翼型はNACA0012(対称翼),翼弦長はC=123.7mmとした.また,翼取付け部にはスリットを設け,取付け角θ=0°~40°の範囲で設定可能とした.翼端板は,航空機主翼のウィングレットと同じように,翼端渦による誘導効力の発生を抑制するために取り付けたものである.翼端板は厚さ1mmの平板で,回転軸と垂直に設置されており,高さhは3種類(h=61.5mm,92.8mm,123.7mm)を設定した. 図2に実験装置全体のレイアウトを示す.性能計測には,吹出し口の寸法が350mm×530mmの風洞を用い,吹出し口から390mmの位置に風車の回転軸を水平に設置して行った.風速はV=4 m/s一定とし,羽根車の直径Dと周速度rωに基づく典型的なレイノルズ数はおよそRe=3.3×104であった. DCモータを発電機として用いることにより羽根車の出力を吸収し,羽根車の回転数はPWMモータ制御装置によって調整した.羽根車の回転数ωと軸トルクTはトルクメータで測定し,以下のように,周速比λとパワー係数Cpで風車の性能を評価した. λ=V/(rω)・・・・・・・・・・・(1) Cp=Tω/(1/2∙ρDLV3) ・・・・・(2) 翼取付け角は,θ=5°から始めて,5°ずつ増加させながら性能測定を行い,羽根車が回転しなくなった時点で実験を終了した. 研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 都市型の垂直軸風車の性能に関する研究 研究課題名(英文): Study on Performance of Vertical Axis Wind Turbine for Cities 研究者: 江尻 英治 千葉工業大学 EJIRI Eiji 工学部 機械サイエンス学科 教授 図1 ジャイロミル風車羽根車の概略形状 図2 実験装置全体のレイアウト 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      3

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