千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
127/148

1.はじめに 大気汚染物質により窒素の準安定励起分子)A(Nu32がどの程度の衝突脱励起反応速度係数(失活レート係数)をもっているか調べている(1)(2)。最近は大気汚染物質としてシックハウス症候群引き起こすとされている,ベンゼン(C6H8) ,アセトン((CH3CO)),トルエン(C6H5CH3),ホルムアルデヒド(CH2O),キシレン(C8H10)について調べ報告してきた(2)。 本報告では塗料や接着剤などの溶剤や原料として用いられる酢酸エチル(C4H8O2),ならびにプラスチックやゴム,塗料の原料として用いられるスチレン(C8H8)による)A(Nu32の失活レート係数の測定を行ったので報告する。 2.実験装置および方法 実験装置および方法は従来の手法(3)と同じである。測定は,陰極表面に紫外光を照射し,十分な電離増倍が生じるような電圧を印加した状態で紫外光をしゃ断すると,図1に示すような過渡電流波形が観測される。電離電流Iが流れている状態から,紫外光をしゃ断することにより,紫外光による光電子放出電流と速い二次電離作用により陰極から放出された電流の電離増倍電流Ipが急激に減衰する。それに続いてImを初期値とし,時定数τmをもつ減衰電流im(t)が観測される。この電流は,電極間で電離増倍した電子とN2ガスとの衝突により生成された準安定励起分子)A(Nu32が拡散により陰極に入射した際に,γm作用により放出された電子による電離電流成分である。この過渡電流波形から)A(Nu32の実効励起寿命を決定し,大気汚染物質による)A(Nu32の失活レートを決定した。 試料気体はN2 (純度99.999 %)に酢酸エチル(C4H8O2) (純度99.5 %)を1.00 ppm混合したガス,およびN2 (純度99.999 %)にスチレン(C8H8) (純度99.5 %)を1.002 ppm混合したガスを使用した。 3.実験結果 3.1 酢酸エチルの結果 N2 / 酢酸エチル(C4H8O2)混合ガス中で測定した過渡電流波形から求めた)A(N32uの実効励起寿命τ1の測定値を図2に示す。○,◇,▽,□で表したτ1は,ガス圧力の増加に従い両対数グラフ上で比例して上昇している。実線で示した曲線は,)A(Nu32が拡散と衝突脱励起により消滅することを考慮した理論から求まる実効励起寿命曲線(4)であり,ほぼ全ての測定点が曲線上にあることがわかる。この理論曲線のカーブフィッティングから得られた酢酸エチルによる)A(Nu32の失活レートは(4.4±0.9) ×10-9cm3/sであった。 3.2 スチレンの結果 図3はN2 / スチレン(C8H8)混合ガス中で測定した)A(N32uの実効励起寿命τ1とガス圧力の関係である。図2で示した酢酸エチル混合ガス中での)A(N32uの実効励起寿命は約7 Torr以上でガス圧力に対して反比例していたが,スチレンの場合は約10 Torr以上でガス圧力に対し 研究項目: 科学研究費(基盤研究(C)) 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 窒素準安定励起分子の各種大気汚染物質における衝突脱励起反応速度係数の測定 研究課題名(英文): Measurements of Collisional Quenching Rate Coefficient of Nitrogen Metastable Molecule by Air Pollutions 研究者: 鈴木 進 千葉工業大学 SUZUKI Susumu 工学部 教育センター 教授 N2/C4H8O2(1.00ppm) d =1.5cm p0=1.0Torr Currnt I (nA)Time t (ms)IIIImTime constant mIpUV light offim(t)00.010.020.030.040.050.1110 図1 過渡電流波形 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      109

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です