千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.研究背景 確率計画法には罰金に対する償還請求(リコース)を有する確率計画問題というアプローチがあり,Benders の分解に基づくL-shaped法による解法が知られている.L-shaped法は,多期間確率計画問題や整数条件を有する確率計画問題にも応用されている.Mulvey, Vanderbei, and Zenios (2)はばらつきに対するペナルティを目的関数に加えた最適化モデルを示し,Ahmed (1)は,ばらつきの指標に分散を用いた場合リコース関数の分散が第1段階変数の非凸関数になることを示した.Takriti and Ahmed (4)は特定の条件下で問題が凸計画になる場合の解法を示した.椎名, 多ヶ谷, 森戸[3]は,分散を考慮した非凸計画問題に対して,分枝限定法に基づく最適解法を示した.しかし,分枝限定法で用いられるリコース関数の分散に対する下界は有効でない場合もあるため,本論文では新たな下界を示し,数値実験により解法の有効性を示す. 2.問題の定式化と解法 椎名, 多ヶ谷, 森戸(3)では,特に単純リコース型の確率計画問題に対して分散を考慮した2段階モデルを考えた.以下に問題を示す. 0, min)(0, s.t.)](,),(Var[)(min:)(22111||10siisisisiiisimiiSiiimisisisiyyyqTxxbAxpcxPi         ただし, m1 × n1 次元行列A, n1 次元ベクトルc,m1 次元ベクトルb は確定値として与えられている.これらに関連するn1 次元変数ベクトルxおよびm2 次元変数ベクトルχは,第1段階変数と呼ばれる.m2 次元ベクトル~は確率変数ベクトルであり,その台をΞとする.また ξを~の実現値とし, そのとりうる値の数をSとする.確率変数~の実現値ξに応じて決定される,n2次元変数ベクトルy(ξ)は第2段階変数と呼ばれ, ysと表される.第2段階変数に関連するn2次元ベクトルq, m2 × n1次元行列T, m2 × n2 次元リコース行列Wなどの値は確定値として与えられている.また, )~(Probsiisipと定める. この問題の分散項は, 図1のように非凸関数となるため, この問題を解くことは困難である. 図1:分散項の非凸性 この問題に対し, (3)では分散の下界を与える関数L(χ) を与えたが, この下界は考慮する範囲で実際の分散から乖離する場合がある.本研究では強い分散となる単調減少関数)(Lを導いた(図2). 研究項目: 科学研究費(基盤研究(C)) 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 大規模確率計画問題の効率的解法の開発と投資リスク管理への応用 研究課題名(英文): Solution Algorithm for Large-Scale Stochastic Programming and Application to Investment Risk Management 研究者:(○;研究代表者) ○椎名 孝之 千葉工業大学 徐 春暉 千葉工業大学 SHIINA Takayuki 社会システム科学部 経営情報科学科 教授 XU Chunhui 社会システム科学部 金融リスク科学科 教授森戸 晋 早稲田大学 MORITO Susumu 創造理工学部 経営システム工学科 教授 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      107

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