千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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る.なお今回ダミー変数Xの値はある範囲内で試行錯誤的に設計する. 図3は5名の被験者(健常者)に対し実験を行った結果である.動作認識にはユークリッド距離を用いた.いずれの被験者についても認識率が向上しており,本手法の有効性が確認できた. 図3 認識率の比較 4.肩・肘姿勢角度変化を考慮した動作認識手法 コップを持ったりドアを開けたりという日常生活における様々な動作は,前腕部の動作のみならず,図4に示すような肩や肘の姿勢変化も伴う.その際には筋電位信号が変化することがあり,ある特定の姿勢時のデータを学習データとするだけでは誤認識が起きやすくなるため,これに対応するための認識手法が必要となる. 図4 肩・肘姿勢角度変化 肩・肘の姿勢変動に対応するため,本研究ではそれぞれの角度が0度,30度,60度,90度,計16姿勢における筋電位データを事前に測定し,これらのみを用いてあらゆる姿勢角度での動作認識を行う.肩と肘には角度センサを装着し,それぞれの姿勢角度が測定できるものとする. 様々な姿勢角度での測定を行った結果,角度変化によって筋電位が変動する傾向があったため,今回は例えば0度データと30度データ間,60度データと90度データ間というように,実測した学習データ間で線形補間を行い,例えば15度などの実測していない姿勢におけるデータを仮想的に作り出し,動作認識時の参照データとして利用する. 3名の被験者(健常者)に対しこの手法を適用し実験を行った.動作認識にはユークリッド距離,マハラノビス距離,k-NN法を用いた.姿勢角度は,実測データがない,肩肘がともに15度,45度,75度とした.図5はある1名の被験者における認識率である.学習データの線形補間を用いた手法により,認識率が向上していることがわかる。他の被験者についても精度向上が確認でき,また特にk-NN法による認識では,90%以上の高い精度が得られた. 図5 ある被験者の認識率 5.まとめ 本研究では,筋電義手制御のための前腕部動作認識手法を開発した.今後はさらなる動作認識精度の向上と多くの被験者による検証,義手使用者の筋電操作トレーニング方法の開発,さらにこれらの成果を基にして,人間らしい自然な動きを伴う実用的な筋電義手制御システムの実現を目指していく. 本研究に関する主な発表論文 (1) 関弘和,鈴木一茂:筋電義手制御を目的としたダミー変数型特徴量に基づく高精度動作認識, 日本福祉工学会誌, 2014. (掲載予定) (2) 山口知也,灰谷達哉,関弘和:腕動作を考慮した筋電義手のための姿勢角度間データ補間による動作識別, ロボティクス・メカトロニクス講演会, 2014. 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      106

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