千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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表1 Si添加量を変化させた原料配合 Si添加量を変化させて作製したβ-TCP仮焼粉末のXRD結果より,仮焼粉末はβ-TCPの回折ピークと一致した。また,FT-IRスペクトルにより,すべての試料にPO4基に帰属される吸収を認め,Siイオンを添加した試料でSiO4基に帰属される吸収を認めた。これらのことから作製した仮焼粉末はSiが固溶したβ-TCPであると考えられた。図1に格子定数の測定結果を示す。図からSi添加量が増加するにともないa軸が直線的に増加したことからP(1)位置にSiが,c軸が直線的に減少したことから空孔にNaイオンがそれぞれ固溶したと考えられた(3と4 mol%との間に不連続性あり)。 図1 Si添加量の異なる仮焼粉末の格子定数 つぎに焼結体の開気孔率とかさ密度の測定結果を示す。また,図2にえられた焼結体の三点曲げ試験結果を示す。図から1100 ℃の条件でSi添加量1〜4 mol%において焼結体の機械的強度が高くなった。機械的強度の高い試料では,見かけ密度が高く,気孔率が低くなり,さらにSEMによる微構造観察では,Siを添加した焼結体は粒子径が小さくなることを認めた。したがってSiをβ-TCPに固溶させることによって,粒子径や気孔率などの焼結性に影響を及ぼすことを明らかにした。 図2 Si添加量の異なった焼結体の曲げ強さ 本申請研究では,β-TCPの調製時に骨形成を誘導する働きがあるとされるSiを1-4 mol%固溶させることで,生体骨の皮質骨と同等な100MPa程度の機械的な強度をもった焼結体がえられることを明らかにした。 3.V固溶リン酸三カルシウムの調製と評価 本研究ではβ-TCPに細胞活性に影響するといわれているVを置換固溶させることを目的とした。このV(バナジウム)は,三価と五価となるためにβ-TCPのCa位置とP位置とにそれぞれ同時に置換することが予想できることから,その固溶メカニズムを明らかにした。 本申請に関係する研究発表 1)ケイ素イオン固溶β型リン酸三カルシウムの作製と評価 ,富澤延行,川崎梨奈,柴田裕史,橋本和明,第23回無機リン化学討論会,島根(松江),2013.9.17. 2)Fabrication and Evaluation of High Density Beta-Tricalcium Phosphate Ceramics Doped with Vanadium Ion,Hashimoto Kazuaki, Shibata Hirobumi, Meguro Takashi, Fukuyama Shigeo, Ishikawa Masafumi,Seki Azusa, International Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2013 (ISIEM 2013), France (Rennes), 29th Oct. 2013. 3)FABRICATION OF β-TRICALCIUM PHOSPHATE CERAMICS SUBSITUTED WITH SILICON,Nobuyuki Tomizawa, Hirobumi Shibata and Kazuaki Hashimoto,13th Asian Bioceramics Symposium,Japan(Kyoto), 5 Dec.2013. 4)バナジウムイオン固溶β型リン酸三カルシウムの細胞評価,井上博貴,柴田裕史,橋本和明,2014年セラミックス協会年会,東京(日吉) 2014.3.17. 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      104

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