千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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リスクマネジメントを守りだけの管理と考えるのではなく、高度化した経営には、前向きなリスクマネジメントが必要であり、投資や戦略実行の判断時にリスク選好過程が重要と考える。本研究は、経営高度化とリスクマネジメントを含めた概念として、従来のERM(Enterprise Risk Management)を改良した概念を提案した。 実践的研究として、企業とのERM適用プロジェクトを実施し、我々のERM導入方法や手順の検証を行っている。 1.ERMの導入方法 従来の企業統合リスクマネジメントであるERM導入については、COSO-ERMフレームワークにより概念は、公表されているが、どのように導入すべきか、効果があがる導入方法何かなどの点で不足している。そこで本研究では、まず、ERM導入手順を明確にした上で、ERM導入について「あるべきERM導入方法」を表1に示した.1) 表1 ERM導入の手順と内容 手順 主な内容 成果物 環境調査・ 目的の確認 ERM導入目的の確認と設定:ERM導入は、リスクを把握し対応を検討すること ERMの導入目的の覚書 目標設定 具体的な目標設定:戦略的なリスクと戦術的リスクを意識して設定する 目標の覚書 プロジェクト企画 実施するためのPJT設置 プロジェクト企画計画書 推進体制と日程 ERMの推進体制と日程表の作成 推進体制とスケジュール リスク特定 リスクの洗い出し・想定外のリスクを無くす リスク俯瞰図(カテゴリ別/分野別)、リスク特定表 リスク分析 リスクの原因、リスクの結果と影響、発生の可能性、 リスク分析表 リスク評価 リスクの評価方法・測定方法、優先付と リスク評価書リスク選好 戦略とリスクの考慮と選択 リスク選好の検討記録 リスク対応 リスク低減・リスク回避、リスク対応の選択 リスク対応表 リスク管理の見直し 全体のPDCAサイクルによる見直し リスク一覧と対応・評価表 2.リスクの特定方法 リスクを特定するには、リスクの洗い出しや想定外のリスクを無くすには、リスクを俯瞰する手法が必要になる。自社のメンバーや既存の考え方だけでは、想定外のリスクが発生しやすいので、客観的にリスクを特定するには、まず広い観点から図1のリスク俯瞰リストを作成しそれを基に、自社のリスク管理表を作成する。2)3)4) 2.1リスク俯瞰図の構成 図1 リスク俯瞰リストの 構成項目例 図1 リスク俯瞰リストの例 リスク俯瞰リストは、リスクのカテゴリーをレベル レベル1、レベル2に分け、リスク3が、リスク項目となる。リスク俯瞰リストは、主な従来研究の文献より、リスクを選択した。 2.2 連関データ分析によるリスクチェック リスクの網羅性や特定もれを防ぐと同時に、リスクの重要性を図るツールの必要性がある。そこで、本研究では、連関データ分析によるリスクチェックを行い、どのリスク項目が重要かをキーマンによる評価を基に、分析した。 研究項目: フォーラム 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 大震災後のリスクマネジメント研究 ― 経営高度化とリスクマネジメントの実践的研究 - 研究課題名(英文): The practical research of risk management to develop management way, after a great earthquake. 研究者: 森 雅俊 千葉工業大学 MORI Masatoshi 社会システム科学部 金融・経営リスク科学科 教授 レベル1 外部環境 レベル2 マクロ環境 レベル3 経済・社会情勢,インフレ、デフレ、地価の変動 政治情勢、規制、行政指導、税制 カントリーリスク(海外事業展開) 環境(地球温暖化) レベル2 業界環境 レベル3 マーケット環境、市況の変動 業界の特性、競合激化、競争相手 技術革新への対応、標準化競争 レベル2 金融市場リスク レベル3 株価 金利 為替 レベル2 ハザードリスク レベル3 自然災害・天災地震・天候不順 損害・破壊・犯罪・盗難 テロ・戦争・ 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      98

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