千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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ポジウムを開催し,「研究開発を成功させるPM」という統一論題の下で,基調講演2本,4WGの成果報告,及びパネル討論を実施した。パネル討論会では、「ものづくりR&D を元気にするPMとは?」をテーマとして、参加者約50名との議論が交わされ、本研究活動への期待が寄せられた。 3.研究成果 以下,2年間の研究成果の一端を紹介する. 3-1.初年度の成果 先ず初めに,ものづくりR&Dプロジェクトの現場でPMが有効に活用されない原因を調査した.先行研究の調査では,明確な理由が見出せなかったため,研究会メンバー間でヒアリングを実施した.その結果、 PMがR&Dで活用されない主な原因は,R(研究)段階の不確実性にあることが示唆された.さらに、ヒアリングで抽出した18項目は、Fig.1に示すように、①啓蒙、②定義・ツール、③ステージゲート(SG)、④人材育成の4つに分類された。 3-2.2年目の成果 初年度の活動結果に基づき、上記①~④の課題に対応する4つのWGを立ち上げて、その要件を明確にした。以下、各WGの主な成果を示す。 ① 啓蒙WG(下田リーダー): 業種によってR&Dの特徴が大きく異なること,及びそれらに適合するPM技法の事例を示した. ② 定義・ツールWG(清田リーダー): 事業化プロジェクトとR&Dプロジェクトの特徴の相違点を明確にした.さらに,R&Dプロジェクトの規模と確定度に応じた目標の決め方や,それに適合するPM技法開発の必要性を明らかにした。 ③ ステージゲートWG(久保,金子リーダー): SG導入に伴う我が国固有の問題点と,業種別SG運用の必要性を示した.SGは,使い方次第でR&Dの意志決定のスピードアップと,限られた経営資源の有効活用の切り札にもなる. 問題点の抽出•R&Dの上流でも一部分は使えるはず.•R&DでPMの有効性が認識されていない.•暗黙知は継承し難い(PJ解散で散逸).•逆転の土壌を確実に残すのに必要なのがPM?•EVMは、R&Dでは使えない(使う必要もない).•Rのスコープを明確にできない.•R&DでのPMは皆がゴールするための旗振りでよい?•R&DへのPM適用は、PJと「みなしPJ」を区別すべき.•ステージゲート(SG)が機能しない(多産・多死).•R&Dは不確実性が高いので、時間管理は緩やかに?•R&Dは、SGの早い段階では見極めが難しい.•SGを通っていない闇プロジェクトが成功.•研究の初めと終わりの定義が難しい.•SGの定義や境界条件が曖昧.•SGでPDCAが回せない.•使いこなしが難しいツール(ex. MS Project)がある.•R&DにPMの押しつけは成功しない.•業種やビジネス規模による違いがある.14つのWGで検討啓蒙WG定義・ツールWGSG-WG人材WG 図1. R&DへのPM適用上の問題点抽出結果 ④ 人材育成WG(五百井リーダー): 従来の業績主義の目標管理制度(MBO:Management by Objective)に,個人の信念や熱意に基づく目標管理制度(MBB:Management by Belief)を組み合わせた,新たな知識創造プロセス(PMPAM:PMフロネシス獲得モデル)を提案し、その妥当性を検証した. 3-3.公的資金への応募 2年間の研究成果に基づき、「ものづくりR&D PMの知識体系構築」を掲げて、H26年度科学研究費補助金 基盤研究(B)に応募したが、残念ながら不採択となった。 4.まとめと今後 ものづくりR&DへのPM適用上の問題点を明らかにし、これを解決するための新たな「R&D PM知識体系の構築」に必要な要件を明らかにした。来年度より、その体系作りに着手する。また、より本格的に研究活動に取り組むため、科研費を初めとする競争的資金に積極的に応募していく。 5.研究成果の発表 5-1.プロジェクトマネジメント学会研究発表大会(発表者:久保裕史,五百井俊宏,下田篤,清田守) ・2013年度 春季研究発表大会, 1604. ・2013年度 秋季研究発表大会, 1405. ・2014年度 春季研究発表大会, 2609. 5-2.国際会議 ProMAC 2014,C15,(in Hanoi). (発表者:H. Kubo, T. Ioi, A. Shimoda, M. Kiyota) 5-3.ものづくりR&Dプロジェクトマネジメント第1回シンポジウム(共催:千葉工大,日本生産管理学会 共催),2014.2. 表1. ものづくりR&Dプロジェクトマネジメント研究会の活動実績と今後の予定 期年度月目標行事定例会特別講演会6・キックオフ・1st8・2nd清田守(リコー)10・3rd五百井俊宏(千葉工大)12・4th冨永章(PMラボ)2・5th長洲毅志(エーザイ)・SPM春季研究発表大会4・6th菰田卓哉(パナソニック)・1st6・7th金田浩明(グロービス経営大学院)8・8th-・・SPM秋季研究発表大会・3rd10・公的資金への応募・9th中田邦臣(リスクセンス研究会)・ProMAC2013・4th12・岡村久和(日本アイ・ビー・エム)・5th2・シンポジウム・・SPM春季研究発表大会・6thWG活動Ⅰ問題分析リーダー会啓蒙定義・ツールステージゲート人材育成2012Ⅱ要件明確化ⅢものづくりR&Dプロジェクトマネジメントの知識体系構築活動2014201520162013 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      97

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